ラグビーリパブリック

5年目に挑む。関西大学 園田晃将ヘッドコーチ

2017.09.27
関西大で5年目を迎える園田晃将ヘッドコーチ
 園田晃将(てるまさ)は毎日楽しい。
「やりがいのある仕事をさせてもらっています。学生は、1年の時にできなかったことが、4年間かけてできるようになる。おもしろいなあ、と感じています」
 現在33歳。関西大の若きヘッドコーチは、やがて5年目のシーズンを迎える。
 現役時のサイズは181センチ、84キロ。今はかなり引き締まった。赤黒く日焼けした中に、細く下がった目じり。温和な表情が人を引き付ける。
 副将の竹中太一は親しみを持つ。
「僕たちがどうしたいのかよく話を聞いてくれます。年が近いので、話しやすいのもいいです。チョケたりもしますしね」
 決定力の高い4年生FBは、大阪弁で「ふざける」の言葉を使い、兄貴的な感覚を一回り上の園田に抱いている。
 そのコーチングは対話から生まれる。
「僕にもっとコーチ経験があれば、学生に『これをやったら勝てる』という教え方をしているかもしれません。でも、たとえ経験があっても、タイプ的にトップダウン型のコーチではないと思っています。どう感じてやっているかを話させる。学生からフィードバックを引き出す。そうしなければ、こちらの自己満足で終わってしまう可能性があります」
 今年の関西大のディフェンスは出る。
 これまではラインを極端に押し出さず、1本のロープで相手を包み込む感じだった。
「これだとウチは体が小さい分、どうしても食い込まれ、ボールをつながれます」
 学生たちは言う。
「もっとディフェンスにこだわりたい」
 その意をくみ、ラッシュさせる。
 8月、長野・菅平での練習試合は3勝1敗。中央大に24−19、日本大に33−19、関東学院大に50−27。専修大には45−64。昨年、リーグ戦の平均失点は43だった。これは摂南大の51点に次ぎ、ワースト2位。夏の結果を参考にすれば、成果は見て取れる。
 関西大で奮闘する園田の出身は福岡である。長丘中でラグビーを始め、福岡工高から東海学生リーグの愛知学院大に進んだ。
「地元を離れるのは、少し抵抗がありました。でも、行ったために食事を作ったりするなど、自立することができました」
 1年時からCTBでレギュラー。その2002年度はリーグ優勝を果たし、第39回大学選手権関西第5代表決定戦で龍谷大に敗れた。
 卒業後はトップリーグ・サニックス入りする。監督の藤井雄一郎は、名城大ヘッドコーチが前任であり、園田を知っていた。
 社会人では猛練習を課せられる。
「練習は『吐くぐらい』ってよく言われますけど、ほんとうにその通りなんです。練習中に吐いている人がいましたから」
 7年の在籍中、九州代表には選ばれたものの、公式戦出場は0。FBには、6歳上の古賀龍二(現アシスタントトレーナー)がいた。2012年にチーム初のリーグ戦100試合出場を果たしたレジェンドを追い抜けない。ゲームに出られない悔しさも味わう。
 コーチに必要なさまざまな経験を抱え、2013年度シーズンで引退。その直後、嘱託職員としてコーチ就任の打診が関西大からあった。正職員であり、監督でもある桑原久佳と藤井は旧知の間柄。天理高ヘッドコーチに転出した松村径の後任だった。
「迷うことなく『やらせて下さい』と言いました。そもそもコーチの人数は限られています。なりたくてもなれない人がたくさんいる。そんな中で声をかけてもらいました」
 福岡・宗像から大阪・吹田(すいた)に生活の場を移す。そして、これまでの4年間で、さらに多くの実体験が加わる。
 2013年=8位・降格(前年31年ぶりAリーグ復帰も入替戦で摂南大に10−36)。
 2014=Bリーグ1位・昇格(1年でA復帰、入替戦で大阪体育大に39−0)。
 2015年=4位(47大会ぶり第52回大学選手権出場。1勝2敗でセカンドステージ敗退)。
 2016年=8位・残留(3校間の得失点差で最下位。入替戦は大阪体育大に10−10と引き分けるも上位リーグのため残留)。
「1年目にBリーグに落ちた時は、3日間くらい布団から出られず、泣きました。いろんなことがあって、酸いも甘いもかみ分けられるようになった感じはしています」
 今年の開幕戦は9月30日。前年4位の近畿大と対戦する。
「今年の4年生は意識の高い学生が多いんです。ラグビーが好きで、一生懸命やります。やらされている感じがありません」
 FB竹中以外にも、主将のPR藤井拓海、SO北田圭史らの名前を挙げる。
「目標は関西制覇です。初戦の相手は強いけど、勝って弾みをつけたい」
 園田には私的にも奮闘理由がある。
 11月に第一子が生まれる予定だ。
 阪神間で知り合った美容関係の仕事をする年上女性と昨年、結婚した。
「女優の井川遥さんに似ているけど、それよりキレイです。料理もむちゃくちゃ上手い」
 桑原はその美しさをほめ上げる。
 園田が「金(かね)の草鞋(わらじ)」を履いて伴侶を探したかどうかは定かではないが、家族のためにも、充実の5年目にしたい。
(文:鎮 勝也)
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