ラグビーリパブリック

隙を逃さぬ「集中力」。パナソニック、好調のトヨタ自動車を撃破!

2017.09.25

先制トライを挙げた森谷圭介。マン・オブ・ザ・マッチの活躍(撮影:桜井斉)

<ラグビートップリーグ 2017−18 第5節>
パナソニック 43−16 トヨタ自動車
(2017年9月23日/埼玉・熊谷陸上競技場)
 一昨季までトップリーグで3連覇を果たしたパナソニックが挑んだのはトヨタ自動車だった。
 2007年に南アフリカ代表を率いてワールドカップ優勝を果たしたジェイク・ホワイト新監督を擁する相手だ。この日も縦への推進力やスクラムで、中盤戦まで17−13と4点差で粘る。もっとも勝ったのは、序盤から隙を逃さなかったパナソニック。3トライ奪取で白星をつかんだWTB山田章仁は、こうまとめた。
「どっちに転がってもおかしくないなか、勝負どころで集中している」
 前半9分、FB森谷圭介が防御の凸凹をえぐり先制する。続く13分にはキックの蹴り合いから攻めに転じるなか、新人のCTB松田力也が「常にコミュニケーションを取るなか、前が空いたらキャリー」と右端を大きく突破。ゴール前で追っ手に捕まりながらも球をつなぎ、最後はSOベリック・バーンズがドロップゴールを放つ。ここまでで、パナソニックは10−0と点差をつける。
 トヨタ自動車はここから反撃に出るが、対するFLデービッド・ポーコックが才能を放つ。
 パナソニックが自陣ゴール前左へ攻め込まれた23分である。CTB松田のタックルに倒されたランナーが孤立したと見るや、右側から接点へ寄って上腕と掌をボールにつける。相手の反則を誘った。
 FLポーコックは17−10と競って迎えた前半終了間際にも魅す。ハーフ線付近で突進役をタックルで転ばせるや、起立。境界線の後ろへ回り込み、密集戦へ身体を当てる。
 かくして向こうの攻めをかすかに乱し、味方の防御網を押し上げる。余計な点を与えず後半を迎えた。
 トヨタ自動車の新人FL姫野和樹主将は、こう天を仰ぐ。
「試合中、凄いなぁと思ってしまいました。自分が行ける、(ボールを)獲れるというところ(接点)しか入らない印象で、質が高い」
 後半もパナソニックは、勝負の綾を離さない。トヨタ自動車がペナルティゴールを失敗した直後の後半11分には、ホワイト監督が「分岐点」に挙げるプレーが起こる。
 キック合戦の延長線上、トヨタ自動車のSOライオネル・クロニエが上空に蹴り上げた球をパナソニックが自陣10メートル線付近左で確保。CTB笹倉康誉が一気に防御を切り裂く。トヨタ自動車は間もなく自陣深い位置から蹴り返すも、それを受けたFB森谷が防御の裏へ球を浮かせる。弾道を追ったFB森谷のタックル、さらにはこぼれ球を軽くドリブルしたWTB山田の1トライ目で、パナソニックはスコアを17−13から22−13に広げた。
 その後21失点のホワイト監督は、悔やむばかりだ。
「本来はロングキックを蹴るところ、ハイボールを…」
 一連の蹴り合いに、開幕5連勝のロビー・ディーンズ監督は「チームにはキックレシーブから攻められるスキルフルな選手がいる」。球際などの判定には両軍とも不服も、最も苦言を呈したホワイト監督は2敗目を受け「そのせいで負けたのではない」と強調。相手が陣地を獲得する際の機能美を、ただただ称えた。
(文:向 風見也)
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