2017年、トップリーグ昇格をかける新しいリーグが作られた。地域リーグから8チームが参加したトップチャレンジリーグだ。
9月17日、第2節の2試合が秩父宮ラグビー場でおこなわれた。
最初の試合は1年でトップリーグ復帰を目指すホンダヒートと釜石シーウェイブスが対戦。ホンダが前後半5トライずつの10トライを奪い、60−3で快勝した。ホンダは開幕戦のマツダブルーズーマーズ戦(53−12)に続きボーナスポイント1を得、勝点10で首位に立っている。
今季、ホンダで公式戦デビューしたのがルーキーのPR具智元(グ・ジウォン)と2歳上の兄・CTB具智允(グ・ジユン)だ。
ともに拓大出身で、弟は大学時代からスクラムの強さで将来を期待されている。スーパーラグビーのサンウルブズに2016、2017年と2年連続で招集。9月15日には日本代表候補が集う第5回NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)キャンプにも参加した。
この試合、本職の3番で先発。ファーストスクラムから具を据えたホンダが釜石を押し込んだ。「いいスクラムを組めました。大学時代は組んで足を後ろに下げてから押しても自分の力で押すことができた。社会人は8人で組まないと押すことができない。そこを意識しています」。サンウルブズ、日本代表候補の練習で長谷川慎・日本代表スクラムコーチから学んだことをチームへ持ち込む。
ホンダにはサンウルブズのシーズンを終えてから合流した。「夏合宿の最初は合わなかったが徐々に修正できました」と、今はスクラム、モールでチームを勢いづけている。
希望の日本代表にも一歩ずつ近づいている。NDSキャンプでは、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチから「(今は)下部リーグだけどしっかり準備しておいて」と言われた。
兄の具智允は2年目。開幕戦にリザーブ22番でメンバー入りした。後半20分、アウトサイドセンターとしてピッチへ登場、公式戦デビューした。さらに釜石戦も22番、後半23分に出場した。
ホンダのCTB陣にはキッカーを担う3年目の朴成基(帝京大出身)、日本代表キャップを持つ森川海斗らがいる。今は「出場した時に短い時間ですがいいプレー、自分の仕事をしたい」と言う。
チームからは「ライン・ディフェンスをあげる。アタックは、ホンダは外が強いのでボールを回す。ボール・キャリアーとしてゲインを切ること」を求められている。釜石戦では、「頑張ったけれどできなかった。満足していません」。
韓国出身の具兄弟。兄は高校(大分・日本文理高)から来日したのでアジア枠。弟は中学から来たので日本人と同じ枠で出場は自由だ。しかし2試合とも、ほぼ同じ時間に入れ替わった。弟は「お兄さんと一緒の時間にグラウンドでプレーしたい」と熱望するが、兄は「一緒の試合に出場できることが嬉しい」とやや冷静だ。
試合後、2人はホームの鈴鹿へ戻った。先週9月12日から訪日している両親と過ごした。父の具東春氏(グ・トンチュン)は元韓国最強のプロップ。父は兄弟に「雨で大変だったけれどお疲れ様」とねぎらった。
韓国出身の兄弟選手がトップリーグでプレーしている先例がある。近鉄ライナーズのHO王鏡聞(ワン・キョンムン、26歳、朝明高−大体大)と弟の宗像サニックスブルースCTB王授榮(ワン・スヨン、24歳、朝明高−大体大中退)だ。ホンダが来季、トップリーグへ復帰すれば具兄弟が2組目となる。
兄、CTB具智允。自分の仕事をする(撮影:見明亨徳)
『三菱重工相模原は連勝も危機感』
秩父宮での2試合目は、三菱重工相模原ダイナボアーズがマツダブルーズーマーズを19−5で下し、2連勝。しかし三菱はミスが多かった。スクラムで圧倒していたがボーナスポイントを狙った後半ロスタイムのスクラムも押しきれず、勝点4の獲得にとどまった。
「最後の10分間の戦いが今の実力。僕は危機感を持っています」と今季、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスから移籍したFLの小林訓也ゲームキャプテンは心配した。
マツダは初戦(対ホンダ)の大敗から「前半20分の戦い」を修正した。前半30分にトライを返し5−7で折り返した。後半最初、三菱ゴール前までボールを運ぶもトライを奪えなかった。「取り切れなかったのがゲームを左右した」(SH佐久間隆ゲームキャプテン)。
具兄弟とは反対にマツダのインサイドCTB李修平(大体大)は2016年、在日韓国人として初めて韓国代表に選出された。今春はセブンズ代表の話もあったがマツダにとどまった。「今日はキックを外してしまった(前半の同点を狙ったコンバージョン)。このリーグは、トップキュウシュウと違い突破役の外国人が力強い。韓国代表になってから周囲の状況を見てプレーできるようになった。活かしてマツダのラグビーをシンプルにやっていきたい」。マツダもリーグ4強内に入り昇格の道をつかみたい。
(文:見明亨徳)
三菱重工相模原は勝利するも最後にトライを取り切れず(撮影:見明亨徳)