首位攻防戦はまさかの大差となった。今季は6月のテストシリーズから負けなしで世界ランキング3位に再上昇した南アフリカ代表“スプリングボックス”だったが、少しずつ取り戻していた自信は、黒衣の男たちにズタズタにされてしまった。
ニュージーランドのアルバニー(QBEスタジアム)で9月16日、南半球の強豪4か国が競う「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」のニュージーランド代表×南ア代表戦がおこなわれ、オールブラックスの愛称で知られるホームチームが57−0と圧倒した。オールブラックスがスプリングボックス相手に57得点は最多タイ記録。0点に抑えた試合は過去にもあったが、得失点差の記録は更新となった。
大会連覇を目指すオールブラックスは4勝0敗(勝点19)となり独走状態に。2位のスプリングボックスは2勝1分1敗(勝点11)となった。
オールブラックスは前・後半4本ずつの計8トライ。
手堅くPGで先制したが、前半16分に華麗なるアタッキングショーが始まった。ハーフウェイ付近でPKを得ると、SHアーロン・スミスがクイックタップから仕掛けて左前方へ大きく蹴り、チェイスしたWTBリーコ・イオアネがボールを確保してインゴールに飛び込んだ。
20分には右WTBネヘ・ミルナースカッダーがインターセプトしビッグゲイン。サポートのSOボーデン・バレットにパスしたあと、10番のマジックハンドからボールは再び14番に渡り、ファンタスティックな連係プレーによるトライで観客は熱狂した。
プレーメーカーのボーデン・バレットは33分にはゴール前でクロスキックを使う。HOデイン・コールズが空中で競って味方の方へボールをはたくと、こぼれ球をWTBミルナースカッダーが拾ってFLスコット・バレットに渡し、チーム3本目のトライが生まれた。
36分にはWTBイオアネが自陣から防御網を切り裂いて大きくゲインすると、すぐ後方にはFW2人がしっかりサポートについていた。HOコールズにつなぎ、最後にゴールへ持ち込んだのは身長204センチ、体重120キロのLOブロディー・レタリックだった。
31−0で折り返したオールブラックスは後半も勢いは止まらず、52分(後半12分)にロングパスをもらったWTBミルナースカッダーが右隅にフィニッシュすれば、63分にはPRオファ・トゥウンガファシがテストマッチ初トライ。73分にはCTBアントン・レイナートブラウンがタックラーを弾き飛ばしてからの力強い走りでSOリマ・ソポアンガのファイブポイントを演出するなど、リザーブの選手たちも躍動し、試合終了前にはラインアウトからのモールで8トライ目を取り切り、完全勝利となった。
屈辱を味わわされたスプリングボックスは、10月7日に地元ケープタウン(ニューランズ)で再びオールブラックスに挑む。
16日にはオーストラリアのキャンベラ(GIOスタジアム)でも試合がおこなわれ、同国代表が45−20でアルゼンチン代表を下し、今大会初勝利を挙げている。アルゼンチンは4連敗。
10−13で後半を迎えたオーストラリアだが、48分にPRセコペ・ケプがピック&ゴーからインゴールに押さえ逆転した。52分にはFWの連続突進でチャンスを作り、前半にトライを挙げていたFBイズラエル・フォラウがSHウィル・ゲニアからロングパスをもらって左隅にフィニッシュし、リードを広げた。
70分、スクラムで反則が続いていたアルゼンチンにイエローカードが提示され、数的有利となったオーストラリアは2トライを追加。
77分にアルゼンチンのWTBマティアス・モローニがキックも使った個人技でトライを奪い返したが、最後はオーストラリアがHOジョーダン・ウエレセのトライとSOバーナード・フォーリーのコンバージョンで締めくくり、逆転勝利で1勝1分2敗(勝点8)としている。
オーストラリアのFBイズラエル・フォラウを懸命に止めようとするアルゼンチン(Photo: Getty Images)