関東学院大のラグビー部は栄華を築いた。
2006年度まで10大会連続で大学選手権決勝に進み、6度の日本一に輝いている。
当時の様子を「ホント、すごいなと思っていました」と振り返るのは、今季の佐々木修弥主将である。楕円球を手にした小学1年時は2002年。チームはその後も2度のチャンピオンに輝いていた。佐々木の述懐。
「強いところって、簡単にいい選手が入るようになるじゃないですか。だから、これはずっと続くのかなと思っていました。でも、本当にひとつのことでガクンとなって…」
2007年冬に起きた部員の不祥事をきっかけに、盤石に映った体制が徐々に乱れてゆく。就任30年超という当時の春口廣監督は職を辞し、以後は部長就任、監督復帰を重ねながらも成績は下降線をたどった。
桜井勝則監督を春口部長が支えていた2012年度には、所属していた関東大学リーグ戦1部を全敗で終える。入替戦も落とし、2部に降格した。
佐々木が関東学院大の門を叩いたのは、1部復帰を目指していた2014年度のことだった。監督として熱心に誘ってくれていた春口はチームを去り、板井良太監督が再出発を図っていた。
佐々木は2年時に2部から1部への昇格を経験、昨季は主戦級のWTBとして1部での入替戦回避に携わった。上位4チームが進めた大学選手権へは出られなかったため「悔しかったですね」と話すが、「1部残留ができたことは大きい。ファンの方が期待できるような大学になってきたと思います」とも続ける。
いまは船頭役として、チームを引っ張る。
「練習への入り方、練習中に中だるみをしないこと…。そういったことを一人ひとりが意識をして、僕からも言ったりしていけば、もっと強くなると思います。常にグラウンドへは先に来て、声を出すようにしています。開始10分前に集まってウォーミングアップをする決まりがあるんですけど、その時も『動けよ』と言う。練習の合間も『ジョグで移動しろよ』と。あとはコーチの言ったことをリピートして、練習の意図を僕からも発信したり…。本当に些細なことなんですけど、こういうことで皆が意識づけできるようにしています」
身長172センチ、体重84キロと小柄も、タッチライン際で鋭いランを繰り出す。「トライを獲れるところは絶対に獲ろうと思うようになってきた。仲間がしんどい思いをしてボールを出して、外まで放ってくれたので、絶対に獲るということは意識しています」と意気込む。
就任5年目の榎本淳平ヘッドコーチは、小柄なチームが得点を重ねられるようBKラインの深さやパスの精度などをチェック。要求のレベルは低くないが、佐々木は「難しいですけど、楽しいです」と断ず。
「コーチが難しいことを僕たちに言ってくれているということは、僕たちができると信じてくれていること。それに応えなくてはいけない」
人生初の主将就任とあってか、「大変ですね。すごく、気を遣います」。控え部員を含めたチームの雰囲気作りには、かなり苦心しているという。
8月の夏合宿時の練習試合で黒星先行。9月3日に組んだ慶大とのトレーニングマッチも14−72で落としている。9月上旬に取材に応じた榎本ヘッドコーチも「うーん、疲れていますね」。シーズンインに向け、メンテナンスが必要だと匂わせていた。
それでも、佐々木は「だんだんいい方向には向かってきています」と言う。
「黒歴史を払しょくするぐらいのことを、いま、しなきゃいけないと思っています」
17日、埼玉・熊谷ラグビー場Bグラウンド。リーグ戦開幕節で、前年度3位の大東大とぶつかる。
(文:向 風見也)