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トヨタ前主将の安藤、役職外れ「win-win」? 新体制下で役割明確。

2017.09.07

第3節のキヤノン戦で奮闘したトヨタ自動車の安藤泰洋(撮影:松本かおり)

 トヨタ自動車でFLを務める安藤泰洋が、いぶし銀のプレーで再逆転を演出した。
 9月2日、東京・秩父宮ラグビー場であった日本最高峰ラグビートップリーグの第3節。キヤノンに7−5と2点差に詰められた直後の、後半4分のキックオフでのことだ。
 敵陣22メートル線上で球を確保した相手に、仲間とともにタックルを仕掛ける。ルールの範囲内で、向こうの持つボールへ手をかける。落球を誘う。
 
 地面に落ちた楕円球は、トヨタ自動車が確保。連続攻撃を仕掛ける。SHの滑川剛人のトライなどで、スコアを12−5とした。
 12−12と同点にされた後半18分にも、安藤は殊勲の働きをする。
 自らのパントキックを追いかけ捕球したライオネル・クロニエの後ろへつき、敵陣ゴール前でできた接点へ身体を入れる。
 ここからトヨタ自動車は、複数名が束になってのボールキープを重ねる。安藤がサポートへ入った左中間の肉弾戦で、キヤノンの反則を誘う。クロニエがペナルティゴールを決め15−12とリードを奪うと、以後は無失点で切り抜ける。
 ジェイク・ホワイト新監督がルーキーFLの姫野和樹を主将に指名したトヨタ自動車はこの日、34−12で今季2勝目を挙げた。今年30歳となった身長182センチ、体重97キロの安藤は、自分の立ち位置をこう捉えている。
「今年は特に、ディフェンスで(持ち味を)見せられているかな、と思います。去年まではなんとなく僕がアタックをするところもあったけど、今年は姫野などオフェンシブな選手が多い。バランスを見て、ディフェンスや下働きをするイメージです」
 昨季は主将を務めた。直前までサンウルブズの一員として国際リーグのスーパーラグビーを戦い、その途中の2016年4月には日本代表デビューを果たしたばかりだった。献身性と頭脳、経験値などが買われた。
 もっともその年度のトップリーグを16チーム中8位で終えると、クラブは体制を刷新。安藤も主将を退き、バトンを受け継いだのは帝京大を出たばかりの大型新人だった。この交代劇について、当の本人はどう思っているのだろうか。安藤が答える。
「ジェイク自身にも、チームを新しくするという意味では僕の主将という選択肢はなかったと思う。その意味では、『Win-Win』でした。いまは、『自分のため』がチームのためになるという感じでプレーできている」
 主将の責任を全うした昨季も、いち選手としての働きに専念したい意志があったのだろう。全体を俯瞰する目線から「チームを新しくするという意味では」と状況を理解し、得意の「下働き」で攻守に加わる。
 一般論として、安藤のよさは数字やデータには収まらないとされる。そのため初来日の海外出身コーチなどは、その存在感を見出すのに時間を要すことがある。サンウルブズで安藤が出番を得たのも、シーズン中盤戦からだった。
 ホワイト体制下でも想定されたこのハードルを、いま、安藤は「コミュニケーション」で乗り越えている。把握した首脳陣のニーズへ、自分の持ち味をアジャストさせる。今季は開幕節こそメンバーから外れたが、第2節から2戦連続で背番号7をつける。
「開幕も出られなかったのですが、そういう時にはチームで自分が何を求められていたのかを聞きに行きます。新しいディフェンスコーチ(ジョン・マグルトン)にチームのシステムについて確認したりと、コミュニケーションは取れています。起用されるかどうかは、僕たちがコントロールできないこと。自分のプレーを出し続けるしかない。いまは、いい感じで来ていると思っています」
 現在のトヨタ自動車は、安藤いわく「今年のチームは、簡単にミスする空気はない。なぁなぁになっていない」。緊張感を楽しみながら、9日の第4節(対 東芝/京都・西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場)を見据える。
(文:向 風見也)
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