狙い撃ちだ。
長野・菅平で合宿中だった8月16日、早大との練習試合に出場した大東大の河野良太主将が、しばし相手走者めがけて鋭くタックルを突き刺す。
接点側から順に人数を揃え一列の防御網を作るなか、ランナーから見てタッチライン側の位置から河野は飛び出す。確実に仕留め、相手の攻撃を鈍らせる。
早大には17−21と惜敗したなか、河野は自らのタックルをこう振り返る。
「面(防御網)で上がるというシステムはあるんですけど、相手がボールをもらうな、と感じたら、(単独で)狙って出るようにしています。僕が1人で飛び出たのを、かわされることもある。それでも僕のプレッシャーで相手のスピードは落ちていて、その両サイドに(大東大の)サポートが付いてくることもあって、そこまで突破はされない…と」
愛知・春日丘高出身(現・中部大春日丘)。就任5季目となる青柳勝彦監督の現役時代と同じく、小柄でしぶといFLとして存在感を示す。チームが組織的防御の徹底を誓うなか、3年生HOの平田快笙に「主将がいいタックルをしてくれるので、周りが引っ張られています」と言われるようにクラブの象徴と化す。
「昨季は前に出てプレッシャーをかけても大きな相手に弾かれたりしていた。今年はタックル成功率を上げようと思って練習してきていて、その成果が試合に出つつあります。相手の目の前でいったんスピードダウンしてから、最後は、(懐へ)踏み込む。そうすればいいタックルができる」
一昨季の大学選手権では16シーズンぶりに4強入りするなど、通算3度の日本一を成し遂げた1980〜90年代の栄華を再現するよう期待されている。
昨季まで4シーズン主力を張ったSHの小山大輝(パナソニック)、SOの川向瑛前主将(クボタ)、WTBのホセア・サウマキ(キヤノン)が揃って卒業。もっともいまもNO8のアマト・ファカタヴァ、LOのタラウ・ファカタヴァという核弾頭、20歳以下日本代表の佐々木剛という黒子役など、FW陣には昨季のレギュラーが多く残る。
ラストイヤーの夏は「アタックでもディフェンスでも寄りの速さを重要視しています」という河野が先頭に立ち、僅差勝負を制したい。
加盟する関東大学リーグ戦1部の初戦は9月17日、埼玉・熊谷ラグビー場Bグラウンドでおこなわれる(対 関東学院大)。狙い撃ちのタックラーは、きょうもプレーのディテールに気を配る。
(文:向 風見也)