昨季トップリーグで優勝を争ったサントリーとヤマハ発動機が今季は第3節でぶつかり、ディフェンディングチャンピオンのサントリーがホーンが鳴ったあとの劇的な逆転トライでライバルを下した。
東京・秩父宮ラグビー場で9月2日、1万4054人が興奮した熱闘は、27−24で決着。
先制したのはサントリーだった。ターンオーバーから継続して徐々に相手を崩し、CTBマット・ギタウのループプレーからFB松島幸太朗、WTB中鶴隆彰が走力を発揮して敵陣深くへ切り込み、サポートしたWTB江見翔太がゴールに運んだ。
しかし28分、サントリーは反則の繰り返しでイエローカードを提示され、流れが変わる。
PGで3点を入れていたヤマハは数的有利の31分、ゴール前のスクラムで優勢になったあと攻めたて、SH矢富勇毅がショートサイドに走り込んで逆転した。
その後、サントリーがPGで同点とし、10−10で折り返すかと思われたが、ハーフタイム前、ヤマハのギャンブルがサントリーの得点につながる。敵陣22メートルライン内に入ったヤマハだが、SH矢富のロングパスをサントリーのWTB中鶴がインターセプトし、ボールはCTB村田大志に渡って80メートル近く走り切り、17−10となって前半を終えた。
それでもヤマハは大崩れせず、51分(後半11分)、WTBゲラード・ファンデンヒーファーのビッグゲインで敵陣深くに入ると、CTBマレ・サウの前進もはさんで、すばやいリサイクルから右に人数を余らせ、WTB伊東力がトライ。この試合でリーグ戦100試合出場を達成したFB五郎丸歩のコンバージョンも決まり、再び同点となった。
62分にサントリーがPGで勝ち越したが、ヤマハは71分、ヴィリアミ・タヒトゥアの力強い走りで敵陣22メートルライン内に入り、ボールを手にしたSH矢富と呼吸が合い逆クロスから走り込んできた主将のNO8堀江恭佑がパスをもらって抜け、パワフルに突進して逆転トライが生まれた。
20−24とゲームをひっくり返されたサントリーはフルタイム直前、27フェイズを重ねたが、ヤマハが耐える。しかし、敵陣22メートルライン内にいたサントリーはホーンが鳴ると同時にペナルティをもらい、最後のアタックに賭ける。タップから仕掛け、ヤマハのディフェンスにわずかなスキがあったか、SO小野晃征がタテを突いてヤマハプロップ2人の間をすり抜け、劇的な逆転トライで秩父宮は興奮のるつぼと化した
サントリーは開幕から3連勝。勝利を目前にしながら逃したヤマハは2勝1敗となった。
トヨタ自動車の勝利に大きく貢献したライオネル・クロニエ(撮影:松本かおり)
秩父宮での第2試合は、トヨタ自動車がキヤノンを34−12で下し、2勝1敗としている。キヤノンは3連敗。
トヨタは前半29分、フィジカルを活かした連続攻撃でゴールに迫り、WTB小原政佑のトライで先制した。
一方、7点ビハインドで後半を迎えたキヤノンは42分(後半2分)、SO田村優がキックでゴール前左にボールを転がし、いち早く反応して確保したWTB原田季郎がインゴールに押さえ、2点差とした。その3分後、トヨタのSH滑川剛人がファイブポインターとなったが、キヤノンは52分、敵陣深くでSO田村から内返しのパスをもらったFBルワジ・ンヴォヴォが防御網を切り裂き、同点につながるトライを獲得。キック成功で12−12となった。
しかし、トヨタは58分にPGで勝ち越すと、相手にイエローカードが出て数的有利となった62分には、ラインアウトからモールで前進し、HO彦坂圭克が突っ込んで得点を重ねた。68分にはゴール前のスクラムでアドバンテージをもらったあと、SOライオネル・クロニエからのロングパスを右大外でもらったWTB小原がフィニッシュし、5点を追加。そして73分にはHO川西智治がトライを決め、トヨタはボーナスポイントも獲得している。
サントリーとトヨタ自動車が総勝点を伸ばしたが、この2チームを上回ってレッドカンファレンスの首位に立ったのは神戸製鋼だ。大阪・万博記念競技場でクボタを45−7と圧倒し、サントリーと同じ勝点14となり、得失点差でトップに浮上した。
神戸製鋼は前半に4連続トライ。序盤にラインアウトからのサインプレーが決まって先制すると、8分には元ニュージーランド代表のSHアンドリュー・エリスが相手を惑わしてFL安井龍太のトライを演出した。23分にはゴール前右のスクラムから攻めて、ルーキーのCTB重一生が地元でトップリーグ初トライを記録。31分にはラインアウトからモールで押し込み、FBコディ・レイのプレースキックも好調で、前半だけで31−0とし、ほぼ勝負を決めた。
神戸製鋼は後半にも2トライを追加。72分には、こちらも新人のWTB清水晶大が嬉しい初トライを挙げている。
最後にSH岡田一平のトライで一矢を報いたクボタだが、1勝2敗となった。
故郷でハッスルしたNECの大和田立(撮影:阿部典子)
ホワイトカンファレンスでは、NECが2勝目を手にして3位につけている。北海道の月寒屋外競技場で豊田自動織機と対戦し、前半の5トライが効いて42−26で制した。織機はいまだ勝星なし。
マン・オブ・ザ・マッチには、前半8分のトライを含め攻守で奮闘した地元・美幌高校出身のFL大和田立が選ばれた。
なおこの試合では、NEC10年目のHO臼井陽亮と、パナソニックから豊田自動織機に移籍したPR川俣直樹が、リーグ戦通算100試合出場を達成している。
大台に到達した臼井陽亮と川俣直樹。そして祝福する仲間たち(撮影:阿部典子)
鹿児島の鴨池陸上競技場ではトップリーグに再昇格したNTTドコモが今季初勝利を喜んだ。コカ・コーラと競り、28−24で逆転勝ちした。
ドコモは序盤にSO佐藤善仁のトライで先制。17分にはLOイオンギ譲が仲間の後押しを受けてインゴールに押さえ、追加点を入れた。
一方、今季未勝利で同じくハングリーなコカ・コーラは、21分にゴール前で右へ大きく展開してWTB八文字雅和がトライを挙げる。しかし、突き放したいドコモは29分、敵陣22メートルライン内でアドバンテージをもらい、SO佐藤のグラバーキックに反応したCTB小林正旗がトライゲッターとなり、21−10とリードして前半を終えた。
コカ・コーラは48分(後半8分)、今季初登場のWTB副島亀里ララボウ ラティアナラがロングパスをもらってフィニッシュし、キック成功で4点差に詰めると、52分にはNO8ジョセフ・トゥペの力強いランでゴールに迫り、SH田辺雅文のデビュー戦初トライで逆転した。
しかし、21−24とされたドコモだったが食らいつき、73分、左サイドを細かくつなぎ、パワフルなCTBパエア ミフィポセチが走り切って再逆転の決勝トライ。
コカ・コーラは終盤、敵陣深くに入ったがラインアウトを失敗し、懸命のラストアタックは最後にパスが乱れ、シーソーゲームを落とした。
山口の維新百年記念公園陸上競技場では1勝1敗同士の宗像サニックスとリコーが対戦し、リコーが35−14で白星を増やした。
サニックスは序盤にキックパスからWTB屋宜ベンジャミンレイのトライで先制したものの、この日は規律が悪く、前半に2人が危険なプレーでシンビンとなり、流れを相手に渡した。
数的有利となったリコーは31分にFB高平拓弥のトライで逆転すると、34分にはスクラムからの攻撃でSOロビー・ロビンソンが敵陣10メートルライン付近から走り切り、貴重な追加点を獲得。
サニックスがまとまりを欠いた一方、リコーは後半も着実に得点を重ねトライボーナスポイント付きの勝点5を手にしている。
マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたリコーのロビー・ロビンソン(撮影:Hiroaki. UENO)