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選手とコーチ。ミキオ、兼任の16年目シーズン 近鉄ライナーズFL佐藤幹夫

2017.08.17
スクラム練習をコーチとして見守る近鉄・佐藤幹夫。右は新主将の樫本敦
 佐藤幹夫にとって、近鉄ライナーズ一筋16年目シーズンがすぐ目前に迫る。
 愛称「ミキオ」は、選手としてチーム最年長。11月12日で38歳になる。
 年齢を感じさせない動きは健在だ。トップリーグ開幕戦で左FLとして先発する。
 8月18日、大阪・ヤンマースタジアム長居での豊田自動織機シャトルズ戦(19時30分キックオフ)である。
「選手として普通に競争してゲームに出たい、という思いは変わりません。だから選ばれればうれしいですね」
 お地蔵さんのような目になる。
 肩書は、咋季の「プレイングアドバイザー」から、今季は「プレイングコーチ」に変わった。「助言」から「指導」へ。勝ち負けにおける責任の比重が上がる。
「コーチとしてはプレッシャーを感じます。選手に言っていることを自分がグラウンドでできなければ、ダメですから」
 2年目を迎える坪井章監督の要望もあって、ディフェンスのコーチングを主とする。
 タックルを含んだ3対3の練習では首に笛をぶら下げて、個々の集団を回る。15対15の試合形式に種目が移れば、ピンクのビブスを付けて、その一員になる。
 なかなかに忙しい。
「コーチとしては、どんな練習をするか、とか、フリップを用意する、とか準備がたくさんあります。開幕戦の織機は、ボールをどんどん動かしてくるチームなので、スペースを与えないようにしないといけません」
 アタックの分析なども担当者と協力しながら進め、ディフェンスシステムを構築する。
 坪井監督の期待度は高い。
「ウチのトライ数は咋シーズン、リーグ最下位でした。その部分の改善に手をつけています。でも、並行してリーグでの最少失点もミキオを中心に目指したいのです」
 トライの総数は31。ヤマハ発動機の最多82の半分にも及ばない。
 攻撃には個々の感性が要求され、完成まで時間はかかるが、守備は組織的な動きでカバーできる。今シーズンの近鉄はまずそこで勝負をかけたい。
 ミキオの指導力に負う部分は大きい。
 といって、自身のプレーヤーとしての鍛錬をなおざりにしている訳ではない。
「今年はフィジカルを見直そうと思ってやってきました。僕が新人だった時代に比べて、今の選手たちはできあがってチームに入ってくる。だから、試合に出るためには年々、強度を上げていかないといけません」
 おもりを身にまとっての懸垂は60キロから5キロ上乗せし、65キロにする。
 現在の身長は181センチ。体重は当たり負けしない3ケタの大台、100キロになった。
 近鉄のFW第3列は、3年目の成長が著しい田淵慎理を除いて流動的だ。
 レギュラー候補だった辻直幸、堀大志、萩原寿哉という5年目までの若手が傷んでいるのはチームとして誤算だが、日本代表キャップ64を誇るトンプソンルークがLOからFLに下がる選択肢もあり、タウファ統悦も健在だ。
 外国人は咋シーズン、サントリーに在籍したソロモン・ティーポレ、7人制ニュージーランド代表のイオプ・イオプアソが加わった。
 その中でのミキオの先発起用は、2学年上でともにバックローを形成した坪井の信頼感がにじみ出る。
「システム的に動くのではなく、気の利いたプレーができる。周りがよく見えていて、穴が開いたところをさっと埋められます」
 経験のなせる技である。
 選手としてのミキオには、リーグ記録「歴代最年長トライ」の自己更新がかかる。
 咋季の豊田織機戦でのトライは37歳2か月2日。10位に入った。
 上位9人で現役選手は、下部組織のトップチャレンジに属するLO伊藤剛臣(釜石シーウェイブズ)しかいない。
 そのため、トライをマークできれば、6位近くまで順位を上げることは可能だ。
 これも長くラグビーを続けてきた勲章の1つである。
 コーチを受諾したことにより、よりラグビーに時間がとられることになった。その部分は笑い飛ばし、前向きに捉えている。
「昼休みの時間を削ったりしています。兼任というのは、誰でもできないことなので、ありがたいなあと思っています。自分にとっては間違いなくいい経験ですから」
 咋季の近鉄の成績は15戦3勝12敗。勝ち点は18で16チーム中13位。一昨年、2015年度の7位から大きく後退した。
 豊田織機は、昨季15位だったが、勝ち点はわずか2しか変わらない。
 今回も激戦が予想されるが、チームとして、ホームでの初戦は落とせない。
 ミキオは、選手として、コーチとして、近鉄のため、全身全霊をかける。
(文:鎮 勝也)

スクラム練習にFLとして加わる佐藤幹夫
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