スピードもジャンプ力も、もっともっと高めたい。(撮影/松本かおり)
まだ少し伸びている。
「できれば2メートルに」と言う山極大貴(やまぎわ・だいき)は、新しく自分の夢に加わったオリンピックの話を嬉しそうに口にした。
「世界中のトッププレーヤーが集まる舞台です。出られるものなら出たい。目指します」
ラグビー協会から出された資料には197センチ、93キロとあるが、「198センチかな」と話す20歳。専修大学の2年生である。7月24日(〜8月2日)から始まった男子セブンズ・ディベロップメント・スコッド(以下、SDS)の合宿に呼ばれた若者は、新たな活躍の場を得て表情が明るかった。
他を圧倒する高さを持つ。今年に入ってU20日本代表候補入り。ワールドラグビー U20トロフィー 2017に出場するためのメンバー入りを目指し、トレーニングを重ねて来た。
しかし重ねられた同候補の合宿から、やがて外れる。「身長が高いのは武器なのですが、接点でも姿勢が高かった。それで前に出られない。寝て、起きての動きのスピードも遅かった」と自身の足りなさを痛感した。
そんなときに届いたセブンズ代表候補からの招集だ。力がみなぎる。
「オリンピックを目指すなんて、1年前の自分の中にはまったくなかった夢ですから」
セブンズは今春の経験がある。関東大学リーグ戦セブンズに専大チームの一員として出場した。
そこでともにプレーした1学年上の野口宜裕がSDSに呼ばれて力を発揮し、脚光を浴びる。先輩は大学に戻ってきたときに合宿での話をしてくれた。向上心をくすぐられていた。
「だから、同じように呼んでもらえて本当に嬉しいんです。合宿に来て、トップリーグでプレーしている方や東海大のモリキ・リードと一緒にトレーニングができる。刺激がたくさんあります。自分の力が足りないことを痛感していますが、力をつけて、早く世界に出られるようになりたい」
分からないことがあれば何でも質問する。きつい練習のときに声を出す。積極的に自身の存在をアピールする。
同スコッド内での愛称はババ。209センチの巨体で人気のあったプロレス界のレジェンド、故・ジャイアント馬場さんからきている。牛乳を飲んで大きく育った。小学生の頃から毎日1リットルをごくりごくり。いまも日に200mlは飲む。
「肉もよく食べていました。量は…食べられるだけ食べる感じです」
ラグビーは保善高校に入学してから。1年生で195センチあった。
得意プレーはマイボールキックオフ時のキャッチング。15人制でも自分の見せ場と自信のある強みは、セブンズの世界では宝だ。そこを磨けば世界への扉は開く。
靴のサイズは「31センチ。で、ワイドなものしか履けません」。大きな一歩を早く踏み出したい。