ラグビーリパブリック

東京オリンピック開幕まで3年。男女セブンズ代表候補『まるで五輪』を過ごす。

2017.07.27
女子代表候補選手たちを指導する、男子セブンズ日本代表のダミアン・カラウナ ヘッドコーチ。
(撮影/松本かおり)
 2020年を見つめている。
 選手村予定地(東京都中央区晴海)の近くに泊まり、競技予定会場(味の素スタジアム)のすぐ横、練習予定グラウンド(アミノバイタルフィールド)でトレーニングを重ねた。一日に午前、午後と2部練を2日間おこない、3日目は午後から2部練。宿舎からスタジアムの移動時間や、午前練と午後練の間の過ごし方も体感した。
 2020年の7月24日。東京五輪の開幕が予定されている。そのちょうど3年前の2017年7月24日に合わせ、女子セブンズ・デベロップメント・スコッド(以下、SDS)と男子SDSが五輪仕様の3日間を過ごした。
 7月15日から合宿をおこなっていた女子SDSは24日からの3日間を冒頭のようなスケジュールで過ごし、男子SDSは24日に集合後、翌日から3日間を同様のリハーサルにあてた。招集された選手たちの頭の中にはいつも五輪があるが、3年前の完全シミュレーションによって、その目標がより明確になったようだ。
 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが率いる日本代表も2015年ワールドカップの前、同年5月に大会がおこなわれるイングランドの試合会場や練習場所を視察した。決戦の地を事前に一度訪れ、その場所の情報を頭に入れたり、そこでの自分の居場所を把握することは、メンタル面から見ても大きな効果があると言われている。
 その効果を知っている岩渕健輔男女セブンズ総監督は、今回のアプローチについて、こう話す。
「オリンピック本番でストレスを感じないようにできれば、と。移動や試合と試合の間の時間をどう過ごすか。ハプニングも起こるかもしれません。今回はそういった想定外のものもあえて入れていきました。ちょっとしたことでは動じないような精神的強さを身に付けていかないといけません」
 東京五輪時の詳細な日程は明らかになっていないため、今回はリオ五輪時のスケジュールを参考にトレーニング計画も組まれた。
 最初の2日間はプールマッチと準々決勝をイメージし、午前と午後に1セッションずつ。3日目は準決勝と決勝が午後からおこなわれるため、トレーニングもその時間帯に実施された。
 1日のうちに複数試合がおこなわれる日程が連日くり返されるセブンズ。コンディショニングも勝敗を分ける大きな要素のひとつ。今回の試みは、メダル獲得のためにやれることはすべてやって戦いに臨む気持ちの表われだ。
「オリンピックにつながっているところ(宿泊施設やグラウンド)で準備を重ねられるというのは素晴らしい機会。若い選手たちにとってはいい経験になる」と話した男子SDSを率いるダミアン・カラウナ ヘッドコーチは、選手たちにはこう言った。
「(五輪開幕までの)3年は長くないぞと伝えました。だから、早い時期にスタートするのが大切だ、と」
 経験豊富な選手たちと、可能性を秘めた若手がミックスされていた今回のスコッド。テクニックの向上を図ったトレーニングで得たものも多かったが、ベテランが若い選手たちに話すリオでの日々のこと、日常の過ごし方も、チームの財産となった。
 2018年の夏には、ワールドカップ・セブンズも開催される。男女セブンズ日本代表はその予選を兼ねるアジアラグビーセブンズシリーズを戦わねばならず、男子は9月1日、2日の香港大会、9月23日、24日の韓国大会、10月14日、15日のスリランカ大会への準備を進め、15人制ワールドカップ開催(8月/アイルランド)のため今年は2大会しかおこなわれない女子代表も、韓国大会、スリランカ大会へ照準を合わせて強化に励んでいる。
 リオ五輪では男子が4位、女子が10位と明暗の分かれた両代表。今回の合宿中には、男子代表のカラウナ ヘッドコーチが女子代表選手に技術指導をおこなうなど、東京五輪の舞台では両代表揃ってメダルを首にぶら下げたい思いは強い。
 開幕前3年の日におこなったシミュレーションは、きっと2年前、1年前もくり返される。決戦の日は、速度をはやめて駆け足で近づいてくるだろう。
 選手たちにとっては、その節目、節目の時にスコッドに生き残っていられるかサバイバルだ。首脳陣は、やれることをやり尽くす覚悟を持って3年を過ごす。
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