ライオンズのファンは、まさかの準々決勝敗退が頭をよぎったかもしれない。今季最多得点者であるエルトン・ヤンチースのゴールキックが決まらない。勇敢な挑戦者にプレッシャーをかけられ、ハンドリングエラーを多発した。大事な終盤にイエローカードをもらい、ホームのエミレーツエアラインパークはざわついた。1点ビハインドで、残り時間は3分を切る……。しかし、辛くも勝った。2人目のキッカーを務めた背番号14のルアン・コンブリンクが自陣からロングPGを決め、土壇場の逆転劇。悲願のスーパーラグビー初優勝へ向け、ノックアウトステージに踏みとどまった。
7月22日、ジョハネスバーグ。レギュラーシーズンを1位で通過した昨季準優勝チームのライオンズは、南アフリカ勢対決となった準々決勝で、8位からの下剋上を狙ったシャークスに苦しめられたが、23−21で逆転勝ちし、準決勝進出を決めた。
ライオンズは前半9分にPGで先制したものの、波に乗れなかった。
リスタート後まもなく、クイックスローインからつないで攻めようとしたが、パスをカットされ、シャークスのWTBコーバス・ファンヴィックにトライを奪われた。16分には黒衣の10番をつけた20歳のカーウィン・ボッシュがドロップゴールを決め、スコアは3−8となる。
早めに追いつきたいライオンズだが、SOヤンチースがさほど難しくない位置からのPGを2本失敗し、リズムが整わない。負傷で離脱したワーレン・ホワイトリー主将に代わってゲームキャプテンを務めるFLヤコ・クリエルらが力走して何度もチャンスを作ったが、シャークスのディフェンスプレッシャーもあってハンドリングエラーを繰り返し、点差を詰められず。ペースをつかめないライオンズは反則も続くようになり、34分、39分とシャークスにPGで加点され、3−14で前半を終えた。
しかし、後半に入って風向きが変わった。45分(後半5分)、シャークスのLOステファン・レウィースにイエローカードが出て、ライオンズは数的有利となる。47分、ゴール前でスクラムを選択して攻めたて、LOフランコ・モスタートがインゴールにねじ込み、トライ。50分にも敵陣深くに入り、連続攻撃をFLクリエルが力強い突進でフィニッシュし、1点差とした。
相変わらずヤンチースのゴールキックは不調で勢いを加速させることはできなかったが、ライオンズは60分にようやく逆転する。自陣でペナルティをもらうと、CTBハロルド・フォースターが判断良くクイックタップから仕掛けて大きくゲインし、サポートについていたCTBライオネル・マプーにつなぎ、ゴールラインを割って(ゴールキック成功)20−14とゲームをひっくり返した。
それでも、勝負はすんなりと決まらない。64分に今度はライオンズのLOモスタートがシンビンで10分間の退出となり、流れは再びシャークスへ。直後、7人となったライオンズのFWパックは自陣深くのスクラムで劣勢となり、シャークスのNO8ダニエル・デュプレアにトライを奪われ、コンバージョンも決まって再逆転、20−21となった。
ライオンズは69分、PGチャンスを得たが、ベンチへ退いたSOヤンチースに代わってキッカーを務めたWTBコンブリンクが決められず、1点ビハインドのまま。
終盤、シャークスのSOボッシュがハーフウェイ付近から連続でドロップゴールを狙い、失敗したが、ライオンズは自陣にくぎ付けにされ、時間は刻々と過ぎていった。
それでも、勝利への執念を見せたライオンズは77分にハーフウェイ付近まで押し戻し、ペナルティを獲得。そして、ショットを選択。コンブリンクがボールをセットしたのは自陣で、ゴールまでの距離はおそらく55メートル以上あったが、弾丸となったボールはクロスバーを越え、エミレーツエアラインパークは歓喜に沸いた。
リスタート後、いったんはボールを失うも、すぐ、自陣22メートルライン内のブレイクダウンで奪い返したライオンズは、ラスト1分はFWでボールをキープして時間を使い切り、苦しみながらも勝利を手にしたのだった。
準決勝の相手は、昨年の決勝で悔し涙を飲まされたハリケーンズ(ニュージーランド)に決定。29日に、ホームで戦う。