屈辱的な大敗を喫し、ファンを失望させたこともあった。世界的な知将に日本はスーパーラグビーをなめているとも言われた。しかし、サンウルブズは尻尾を巻いて逃げ出すチームではなかった。
7月15日、東京・秩父宮ラグビー場。2017年のスーパーラグビー最終戦で、優勝3回の戦績を誇るブルーズに挑み、48−21で大きな大きな勝利をつかんだ。サンウルブズがラグビー王国ニュージーランドのチームを倒したのは初めて。さらに、世界最高峰リーグともいわれるこの大会に参加して2年目のサンウルブズにとって、1試合48得点、8トライはチーム最多記録となった。1勝に終わった昨年を上回る2勝13敗(勝点12)という成績で、18チーム中17位でシーズンを終えた。
「このシーズン、すばらしいサポートをありがとうございました」
ゲームキャプテンを務めたNO8のヴィリー・ブリッツが試合後のインタビューで笑顔を見せた。
「今週は、サンウルブズのジャージーを着るプライドを取り返す戦いをしてきました。一人ひとりが力を出し切って結果を出すことができました」
ガマンの序盤となったサンウルブズ。前半8分、相手に先制を許した。12分にはSH内田啓介がプレッシャーをかけられてボールを失い、つながれて連続失点。
しかし16分に反撃する。サンウルブズはゴール前でPKを得、クイックタップからの連続攻撃でCTBティモシー・ラファエレが突っ込んでインゴールに押さえ、スコアボードを動かした。
25分に相手FBマイケル・コリンズにインターセプトトライを許し、点差を広げられたものの、スピーディーなアタックは攻撃力高いブルーズにもひけをとらず、食い下がった。そして38分、クイックスローインから果敢に攻めて、しなやかな走りで防御網を切り裂いたWTB松島幸太朗からNO8徳永祥尭、SH内田とつながり、トライ。
14−21と7点差に詰めて前半を終えた。
気温33度という酷暑のなか、後半、サンウルブズはディフェンスでも奮闘して相手の体力を奪う。
逆に、ハングリーな狼たちの運動量は落ちず、53分(後半13分)にはカウンターラックでボールを奪い返し、松島が蹴ったボールをチェイスしたCTB山中亮平がインゴールで押さえ、トライが認められた。
その後、ブルーズのFLジェローム・カイノが危険なタックルでイエローカードとなり、数的有利となったサンウルブズは58分、ラインアウトからモールで押し込み、相手の反則によりペナルティトライを獲得して逆転。26−21となった。
63分には相手のラインアウト失敗から敵陣深くでチャンスとなり、途中出場のSH茂野海人がインゴールに突っ込み加点する。68分には相手が失ったボールを茂野が足にかけ自ら確保してゴールに迫り、CTBラファエレにつないで勝利を引き寄せた。
勢いが止まらないサンウルブズは75分、敵陣深くで相手キックをチャージしてラファエレがハットトリックを達成。そして78分には松島のビッグタックルからボールを奪い返してたたみかけ、徳永がチーム8本目のトライを挙げ、観客1万2543人の前で歓喜の瞬間を迎えた。
今季からサンウルブズの指揮を執ったフィロ・ティアティア ヘッドコーチは「ハードワークをしてくれたスタッフ、選手一人ひとりを称えたい。そして、世界で最もすばらしいファンの皆様に心から感謝の言葉を申し上げたい」とコメントした。
来年は15チーム参加となりフォーマットが再編されるスーパーラグビー。サンウルブズはアフリカ1・カンファレンスからオーストラリア・カンファレンスに移り、3年目の挑戦を迎える。2019年に日本で開催されるワールドカップへ向けて、代表候補となる選手たちのさらなる躍進が期待される。