大会MVPの坂井克行にはプロテイン1年分が贈られた。(撮影/松本かおり)
やるべき人がやることをやってラストゲームを締めくくった。
7月2日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた『なの花薬局ジャパン2017』でセブンズ・ディベロップメント・スコッド(SDS/セブンズ日本代表候補)がカップトーナメント(最上位トーナメント)を制した。各地域のセブンズ大会、主要大会の優勝チームが集まったステージでの優勝に、この先のセブンズ日本代表の骨格を成す選手たちも安堵の表情を見せた。
この国のセブンズ界を牽引してきた選手、成長中の若手と、可能性を秘めた者たち。SDSは、そんな顔触れだった。トップリーグに所属していない選手たちが何人も。しかし、胸にはサクラのエンブレムが付いているから負けるわけにはいかなかった。
28-19のスコアで勝ったトヨタ自動車とのファイナル。開始2分に林大成のトライで先制し、流れをつかんだ。
3分、小澤大主将がインゴールに入って追加点。前半最後にはタウファ オリヴェにトライを許すも、14-7とリードして迎えた後半に入るとベテランの坂井克行が輝いた。右ライン際で好サポートから地面に落ちたボールを拾い、走ったのが3分。7分には独特のステップで防御を翻弄した。
坂井は18得点(2T4G)を挙げたこの試合だけの活躍でなく、一日を通して安定したパフォーマンスを発揮したことが評価され、大会MVPにも選ばれる活躍だった。
チームを率いたダミアン・カラウナ ヘッドコーチは、セブンズ日本代表を率いる人だ。「(同代表は)秋のアジア・セブンズシリーズ、来年のセブンズ・ワールドカップ、2020年のオリンピックに向かっていくために、いま、新たなスタートを切ったところ。若い選手を育てるこの時期に、いい機会を得た。きょうは若い選手がいいパフォーマンスを見せた。勝利を祝福するとともに、前進したことを祝福したい」と自チームについて話し、大会全体を見渡して、「大学生を含めた他のチームにも、才能ある選手が多くいた。そういった選手たち、各チームともっと連携を取り合っていきたい」と言った。
2016-2017年シーズンのワールドラグビー・セブンズシリーズでコアチーム中最下位となり、2017-2018年シーズンは同シリーズへの常時参加資格を失った男子セブンズ日本代表。それに代わる強化策のひとつがSDSだ。国体で活躍した選手や大学生にセブンズを経験する機会を与え、この分野に造詣の深い選手たちとともに時間を過ごすことで成長を促す。国内のさまざまな大会に参加し、「負けられない」プレッシャーと戦いながら、心技体を高めている。
専門性が高い競技で五輪でのメダル獲得を目指しているものの、セブンズ専任選手契約を結ぶ環境が整った選手は、まだ鶴ヶ?好昭ひとりというのが現状。専任契約選手を10人以上にして専門アスリートだけで代表スコッドを作る理想を追いつつも、SDSを継続してセブンズの選手層を厚くする作業も続けていくしかない。
今大会を振り返ってカラウナHCはSDSのひとり、専修大学3年・野口宜裕の持つ才能を高く評価した。今春の関東大学リーグ戦セブンズでの活躍からチャンスをつかんだ選手だ。そんな原石を同HCがどのように磨き、このシステムの中でどう育成されていくか注目される。
午前9時過ぎから午後7時まで、12チームがピッチを走り回った1日。プレート(中位)トーナメントでは早大との延長戦を制した大東大が、ボウル(下位)トーナメントでは明大が優勝した。
優勝のSDSは賞金50万円+お米1トンも手にした。(撮影/松本かおり)