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関西学院大、新体制で臨む春―青山学院大との定期戦に26−21で勝利する―

2017.06.05
関西学院大は青山学院大との定期戦で前半37分、スクラムトライを挙げる。
 朱紺ジャージーは復活の兆しを見せる。
 6月4日、関西学院大は西下してきた青山学院大に26−21(前半21−0)と勝利する。
 定期戦も兼ねる一戦での白星に、SO山田一平(4年)からは笑みがこぼれた。
「勝てたんはデカいと思います」
 後半13分、山田は前に突っ掛ける。左横のランナーの背中を通してパスを放る。ブラインドサイドからライン参加したWTB鮫島魁(4年)がゲイン突破。山田は2次攻撃で大外に待っていたFB碓井恒平(2年)にトライへのラストパスを送る。
 26−14。追撃ムードを断ち切る。
 絵にかいたような加点。山田は鮫島とのプレーを説明する。
「あれはきれいに行きました。相手のニセン(第2CTB)が外にずれるので、僕が突いて行けばあそこは開くと思っていました」
 消えない笑顔が、少しずつ湧き出始めた自信を物語る。
「先週はキョウサンにも勝てました」
 5月28日には京都産業大を21−19とこれまた振り切った。
 関西Aリーグ前年6位が3位を下した。
 関西学院大は層に厚みが出てきている。
 この日、U20日本代表候補のLO杉原立樹、CTB山本悠大、WTB中孝祐の2年生3選手が不在だった。長野・菅平での合宿に参加していたためだ。
 CTBコンビは関西学生代表の金淳英(きむ・すにょん、4年)と香川凛人(3年)。
 山田は話す。
「ここに山本が(レギュラー争いに)入ってきますし、バックスリーには市橋がいます」
 市橋誠(4年)はケガで出遅れているが、スピードを利した決定力を持つ。
 部内での競争は総合力を高めている。
 関西学院大は今年、新監督としてOBでもある牟田至を迎えた。
 サントリー酒類に勤務する46歳。2007、2008年に続き、9年ぶりの再登板になる。
 昨年、「学生主体」を伝統とするチームにおいて監督・大賀宏輝と学生との間に練習内容などを巡って内紛が起こる。シーズン中、大賀はベンチを外れる。まとまりを欠いたチームは6位に終わり、一昨年の8位に続き低迷を脱することはできなかった。
 チーム再建を託された牟田の手腕は実証済み。2008年には51年ぶり関西リーグ優勝を呼び込んでいる。
「最初に4年生とミーティングをしたのですが、みんなまじめだなあ、という印象でした。こちらの言うことも理解してくれました」
 今はサンゴリアスと呼ばれるチームで6年間プレーをした牟田は、後輩たちで関西勤務の岸和田玲央、新田浩一、鈴木亮大郎をコーチに招き入れた。
「自分に一番近いところにいる人間がコミュニケーションをとりやすいですから」
 最年長は30歳の岸和田。3人ともに現役引退から日が経っていないため、若さと同時に指導が新しいのも魅力でもある。
 試験休みを含め、春の休暇中は4部練習。大学が開講している現在も3部練を続ける。
 午前7時過ぎからフィットネスやユニット。講義の合間を縫ってウエイトをこなす。午後6時から再びグラウンド練習。1日の練習時間は計4時間を超える日もある。
「9月末にリーグ戦の初戦がきます。そこから逆算すると練習時間が足りません」
 仕事上は管理職でもあるだけに、牟田にはプランニングはしっかりとできている。
 今年は「ファミリー制度」を作った。
 朝練習後の朝食やウエイトを15個に分けた班で行う。学年、ポジションはバラバラ。
「上下の風通しの悪いのをやめよう、ということです。学生から相談があったし、僕自身もそれを作ろうと思いました。サントリーでも似たようなものがありましたしね」
 個々の思いを出しやすくして、不満をすくい取る。その上で一体感を強める。どちらが悪いかという責任論ではなく、前年のようにはならないという意思が感じられる。
 牟田は言う。
「学生が主体的にやらないと強くなりません。やるのは学生なんですから。でも学生が主導するのはよくない。痛い練習は逃げたくなるけど、やらないと試合に勝てません」
 青年期を過ごす者たちの希望を聞きながら、最終的な判断は首脳陣が下す。
 関西学院大にとっては新しい流れの中で、京都産業大、青山学院大戦の連勝がある。
 新田、鈴木のフロントロー出身者をコーチに得て、セットプレーは強化された。
 青山学院大戦では、前半37分にスクラムトライを奪う。
「土日は2時間スクラムをぶっ通しで組んだりしています」
 主将の HO赤壁尚志(4年)は振り返った。
 今年で71回目を迎えた定期戦の通算成績は関西学院大の31勝39敗1分となる。
 ここ10年に限って言えば8勝1敗1分。今回も優位を保てた。この白星を来たる秋のシーズンにつなげたい。
(文:鎮 勝也)
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