今季は10試合(先発5、途中出場5)に出場し、398分プレー。
(撮影/松本かおり)
約束します。
「エナジーを与える」
5月27日におこなわれるチーターズ戦(秩父宮)で背番号17を背負うサンウルブズの山本幸輝(やまもと・こうき/ヤマハ発動機)は、試合への決意をそう話した。昨季はオープニングゲームのライオンズ戦に途中出場も、重い肉離れで13分のみの出場に終わった。シーズンを通してそれだけしか働けなかった男が、今季はここまで全11試合中10試合に出ている。
5試合先発、5試合途中出場の26歳は、特に途中出場時、冒頭の言葉のように仲間にエナジーを与えることを意識する。
「山路(泰生)さんも、いつも言ってくれるんですよ。ふたりでエナジー与えるプレーしよう、と。途中から出たときには、例えばいいスクラムを組めたときには必要以上に喜ぶようにしています。自分が先に出ていて疲れが出る時間だったら、その方が嬉しいので」
チームのムードメーカーとしても存在感を放っている。
先週のシャークス戦はメンバー外も、今回のホームゲームでメンバーに選ばれ、気持ちが高ぶる。
「ホームで試合に出られるのは光栄です。それもFWでゴリゴリくるチームと戦うメンバーに選ばれた。セットプレーの安定を求められているだろうし、自分の役割を果たしたい。チームは後半のエナジーがなくなっていく時間帯にやられることが多いので、投入されたら勇気づけるプレーをして引っ張りたい」
毎日の練習で自分なりに目標設定をする。それをクリアするよう力を尽くす。その繰り返しで力を蓄えた。そして、毎試合ラストチャンスの覚悟でピッチに出る。今季試合出場機会を重ね続けられているのは、そんな日々を送ることで進化できたからだ。
「成長できているとは思いますが、満足したら終わりです」
アジアラグビーチャンピオンシップを制した若手中心の日本代表も意識する。
「1番をつけてプレーしている選手は、みんないいプレーをしていますよね。だから(自分も)もっと活躍しないと」
6月に控えるジャパンのテストシリーズにも絶対に出場したい。
今季は多くの試合に出ているから、国やチームによっての押し方の違いや、それぞれのスクラムへの執着度を戦いの中で感じ取っている。
「どのチームも組み方とかは違うのですが、どうにかしてやろうと向かってくるところは共通しています。だから、一瞬でも力を抜くとやられてしまう」
そんな相手に対し、引いたら負ける。
「8人全員で押すのは基本なのですが、やられる前にやる。その意識で組んでいます。先に仕掛けられたらダメ。相手よりはやくいい姿勢をとらないと」
大きなスコッドで戦う今季。フロントローの組み合わせも多様になっているが、人が代わっても崩れぬシステムは構築されつつある。息の合ったプレーを常に発揮できるようにするのも、自分の役目のひとつだ。
移動距離の長い遠征が続くスーパーラグビー。疲労の蓄積は避けられない現実も、本人は「大丈夫。それ(元気なのが)が取り柄ですから」と親指を立てる。
「日本にいるときはサウナに入ったり、水風呂を使っての交代浴などで疲れをとるようにしています。内田メソッドと呼んでいるのですが(SH内田啓介がメニューを紹介し、リードしている)、なかなか効くんですよ。疲れは気分的にリフレッシュするのも効果的なので、海外ではお茶したり、夜にトレーナーの方に面倒をみてもらったりしています」
ハードな日々を楽しんで過ごすことで、心身のコンディションを整える。
暑くなりそうな5月27日、14時15分キックオフのホームゲーム。背番号17は4月8日のブルズ戦に続き、ピッチで勝利の雄叫びをあげることができるだろうか。
仲間にエナジーを与え、ファンに勝利を届けたい。