昨季の大学選手権を準優勝で終えた東海大にあって、3年生ながら「チームを引っ張る存在」を目指すのは西川壮一だ。
この時期の公式戦、関東大学春季大会Aグループでも2試合連続で背番号7をつける。公式で「身長179センチ、体重94キロ」とトップレベルのFLにあっては決して大柄ではないが、球際に身体をねじ込む。鋭いキックチェイスを仕掛ける。
何より、要所で味方に発破をかける。5月14日、静岡・県営草薙球技場。春季大会の明大戦でのことだ。ビハインドを背負って迎えた終盤戦に差し掛かれば、自軍スクラムを組む直前のフロントロー陣に「ここだ」と声をかけた。
このスクラムで相手の反則を奪えば、獲得するペナルティキックで敵陣の深くに侵入。試合を通して優勢だったモールを組み、逆転を狙える…。明確な青写真を描いていた。
「点差や自分たちの状況を見ながら、『ここで〇〇をせなあかん』と考えながら試合をしているつもりです」
東海大仰星高時代は主将を務めた。競技への理解力、勝負の肝を察する風情で、かねて定評を集めていた。
大学生になると、身体づくりを根っこから見直した。東海大がフィジカリティの強化に注力するなか、食事内容を改善する。
「オフの間、食事の食べる量と回数を変えました。朝、昼、晩にたくさん食べる。それに加えて練習の前後に絶対に何かを食べるようにしていて。なかでも積極的に摂っているのが、ナッツ類と(鶏の)胸肉です」
自己申告によれば、昨季終了時の「90キロ」を「97キロ」にした。身体をバージョンアップさせるなか、心の変化も感じたという。
「何か、脂っこいものを好まなくなってきました。昔は好きだったんですけど」
目標への道のりの険しさも、痛感している。
明大戦では38−35と逆転勝利を収めたものの、苦戦を強いられていた。注力してきたぶつかり合いで、相手の勢いに圧された。
「流れに乗りたい時のここぞのプレーで、ミス…。僕たちの練習中の集中力のなさが出たと思う。グラウンド外のところから見直して、隙のないチームになれるようにしていきたいです」
28日には山梨・中銀スタジアムで、春季大会の3試合目に挑む。相手は大学選手権8連覇中の帝京大だ。明大戦で起こったことを一つひとつ思い返す西川は、最後に前を向いた。
「まず帝京大戦に向けて、レベルアップしていきたいです。個人的にはタックルの精度を上げて、ブレイクダウン(ボール争奪局面)を制圧する。日本一になった時にチームを引っ張っていた、という人間になれるように…」
創部史上初の優勝に向け、ごまかしのきかない一本道を走る。
(文:向 風見也)