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「ラストチャンス」。W杯出場へ、知念雄が「余計にわかった」こととは。

2017.05.17

5月6日の香港戦で先発出場したPR知念雄(撮影:松本かおり)

 昨春初めてラグビーの日本代表に入った知念雄は、4月10日、1年ぶりにナショナルチームへ復帰した。
 前年度の秋に就任したジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチのもとでは、この春が初選出だった。現体制の強化機関であるナショナル・デベロップメント・スコッドのキャンプへは、全4回中第4回目からの参加である。欠員補充の格好だ。
 若手中心のメンバー編成で挑むアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)では、第2戦のリザーブとなって続く第3戦で先発入り。合流から1か月足らずで、スターターの座に上り詰めたこととなる。
 
 4月29日、東京・秩父宮ラグビー場であったARC第2戦。先発した須藤元樹の故障に伴い、前半10分から右PRに入った。韓国代表に80−10と快勝するなか、相手ランナーを敵陣ゴール前からインゴールへ押し込むタックルなど怪力をアピールしていた。
 それでも本人はこうだ。
「ラストチャンスです。あの試合も、ビデオで見返したら全然ダメだったので」
 5月6日に秩父宮で挑んだのは、香港代表との第3戦だった。29−17で制するも、ワールドカップ未経験の相手に2度リードを許すなど難儀した。それもあってか、ゲーム後の本人はただ反省の弁を重ねる。
「もっとイケるかと思っていたんですけど…」
 特にスクラムでは、チームの求めるスタイル通りに組めないことがあったという。
「自分のなかでの癖があって、それが必要のないものであって。こっちでやっていることとの、細かいところのすり合わせが…。いい時の回数がまだまだ。もちろん、それが100パーセントじゃないといけない」
 さらに13日のARC第4戦では、敵地の香港フットボールクラブで香港代表と再戦。後半14分から登場し、16−0という辛勝で終えた。
 日々、勉強である。第3戦の直前期のみ合流したワールドカップ経験者の堀江翔太から、感銘を受けているという。
「一緒にやっていると、コミュニケーションがわかりやすいな、と。練習中も、いろいろなところに目を配っていると感じます。例えば、ディフェンスのブレイクダウン(ボールの争奪)。2人目に入る選手が相手を押し込むのかボールを奪いに行くのかという判断について、合間、合間に『この時はこうした方がいいんじゃない?』とさらっと言ってくれる。選択肢を広げてくれるようなアドバイスをくれます」
 ハンマー投げから本格的に競技を変えて、3年目を迎える。もっとも代表デビューを飾った段階で、「もっとラグビーを知りたいと思う気持ちは、皆以上に抱き続けないと。ただ、そこを変に負い目に感じるのはよくない」と話していた。異色の経歴を意識し過ぎず、あくまでラグビーマンとして研鑽を積む。
「いい判断をして、それを実行するにはスキルが必要。堀江さんや立川さん(理道、こちらもワールドカップ組)には、絶対的にそのスキルもある。ああいう人たちとやっていたら、フィジカルだけではなくラグビーのスキルも必要だというのが余計にわかります」
 このほどプール戦の組み合わせが決まったワールドカップ日本大会は、2019年にある。
「ワールドカップに出ることが、わざわざ競技転向を勧めてくれた人たちへの恩返し」
 知念はラグビーを始める際、このステージで戦うことを自らに課していた。行く先々での「ラストチャンス」を活かし、大舞台に立ちたい。
(文:向 風見也)
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