ラグビーリパブリック

ジョセフのリクエストと山田のあふれる自信。日本代表から見たプールA

2017.05.12

現在はアジアチャンピオンシップに集中している日本代表のジェイミー・ジョセフHC(撮影:松本かおり)

 日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)は、「最高の気分です」と言った。2019年に開幕するラグビーワールドカップ日本大会のプール戦の組み合わせが決まったことで、より具体的な準備ができるからだ。
「大会の2年前からある程度チームを作り上げ、メンバーを固め始めるというのが私の考えでもあります。11月以降、選手の状態を見て構想を固めたい。経験値のある選手に関してはあと2年間戦い続けられるかを、若い選手に関してはワールドカップで戦う力量があるかどうかを見極めていきたいと思います」
 抽選会は5月10日、京都迎賓館であり、日本代表は4つあるプールのうちプールAに入った。
 欧州6強の一角であるアイルランド代表、スコットランド代表、欧州予選1位(ルーマニア代表などが濃厚)、欧州予選2位対オセアニア予選3位のプレーオフ勝者との対戦が決まった。日本代表は6月にルーマニア代表、アイルランド代表と国内でテストマッチをおこなう予定だ。
「今年6月にはアイルランド代表と戦える。我々の準備に関してはとてもいい経験になり、強化に役立つ試合になる。昨年はスコットランド代表と戦いました(マーク・ハメットHC代行のもと)。その戦いから通用した点、課題を振り返りたいと思っています。もしかしたら(ヨーロッパ予選1位で)ルーマニア代表が同じ組に入ることも無きにしも非ずですが、ルーマニアとも今年6月に対戦します。6月は勝ちに行きたいし、成功を収めたい。あとは比較的若い選手たちにチャンスを与えて、高い強度の試合をしたいと思います」
 一夜明けた5月11日、滋賀市内で取材に応じた“JJ”は、「自国開催は強化に向けて絶好のチャンスだという捉え方をしていただき、そういう発信をしていただければ」と報道陣にリクエストを出す。
「日本のいろいろなところにいるコーチがメディアにコメントを出しています。自国開催だから大きなプレッシャーがかかる、とか、いろいろな話題も出ています。そういうものが多くなると、選手への負担になる…。オネガイシマス」
 巷では今度のプールAが「幸運な組」との見解が出回っているようだが、相手が世界ランク上位であることは変わらない。
 指導者としてワールドカップに挑んだ経験を持たないジョセフHCは、過度なゆるみとも過度な緊張とも無縁なスタンスを取りたいようだ。
「メディアや国民からの印象を新聞で読みましたが、我々が楽なプールに入ったという見解があるようです。ただ、私は決してそう思っていません。アイルランド代表はヨーロッパ6か国対抗でイングランド代表に勝っているチームです。世界3位だと思っている。スコットランド代表も誇り高く、日本代表は彼らに勝ったことがありません(互いがテストマッチと認めた試合では未勝利)。2019年は大事な戦いになると思っています」
 一方、前回のイングランド大会で3勝を挙げたWTBの山田章仁は、「やりやすい相手」と感想を述べる。
 いまのジャパンはグラウンド中盤あたりからでもスペースへキックを放つなど、体力を温存しながらスペースを獲得するスタイルを貫く。それに対し、ヨーロッパ諸国は奇想天外な走りを繰り出すよりもパワーゲームを仕掛ける傾向が強い。昨秋もウェールズ代表に敵地で30−33と肉薄しているだけに、山田はこう発するのだ。
「僕も詳しく分析をしたこともないですけど、戦術的にも戦いやすい相手なんじゃないかなという思いは、個人的にはあります。それはあまり、変に隠すことはないんじゃないかな、というのが僕の個人的な思いで。いい思いを持ち続けていくのがいいことかな、と思います」
 国民悲願の8強入りへ向け、自己肯定感を高めようとしているのだろうか。6月のアイルランド代表戦時、相手は一部主力を欠いた状態で来日する予定だ。山田は「勝ちに行って。相手に可能性をひとつも見せないで勝ちに行くということが大事。弱みを見せずに、しっかりと自分たちが勝てるところを見せるべきだと思います」とし、こうも続けた。
「こちらがしっかり勝って、勢いをつかんで、若い選手を連れてきたことを後悔させる…と」
 本番は34歳で迎える。2大会連続でのメンバー入りに向け、「もちろんいままでの経験も財産になっているので、それを活かすのに(2019年は)いいタイミング」と声を張る。
「周りがよく言う年齢や身体に関しては全く心配していない。うまくピークを持っていけるように…。抽選会からワールドカップを意識しているという意味では、いいスタートが切れていると思います」
 あえて慎重に語るジョセフHCと、あえて大胆に宣言する山田。2人とも大一番から逆算し、必要な準備を積み重ねてゆく。
(文:向 風見也)

自国開催ワールドカップ出場へ強い意欲を見せる山田章仁(撮影:松本かおり)
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