ジェイミー・ジョセフ日本代表HC(中央)とスコットランドのディレクター・オブ・ラグビー、スコット・ジョンソン氏。右端はジョージアのミルトン・ヘイグHC。(撮影/長岡洋幸)
昨晩は夢を見ることもなく、深い眠りについたそうだ。
2019年ラグビーワールドカップの組み合わせ抽選会を終えて記者会見に出席したジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、昨夜の様子をそう語った。
笑顔だった。プールAで戦う相手はアイルランド、スコットランド、欧州1位と、オセアニア3位×欧州2位のプレーオフ勝者に決まった。指揮官は「ワールドカップはどこ(のプール)に入ろうがハード」と話し、確かにそれは事実だが、シックスネーションズ王者のイングランド、ザ・ラグビーチャンピオンシップを戦う南半球の4強国(NZ、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)がいない。
同じバンド3の他国と比べたなら恵まれているだろうか。そんな感触が、その表情に表れているように見えた。
ジョセフHCは笑顔ながらも慎重に言葉を選びながら話した。
「抽選会は終わりました。(相手が決まったのだから)準備を始めるだけです。(同組は)素晴らしいチームばかり。楽しみです」
欧州1位としての出場権獲得を有力視されるルーマニアもアイルランドも、6月に来日が予定されている。その戦いに向けて、「何人か負傷者がいます。コンディションのいい選手を選ぶ」とした。
「ルーマニアは力つけています(ワールドカップ出場が有力です)。アイルランドは強い。しかし知見を得られる、経験を積める。その点で両チームにとっていいことです」
特に昨秋ニュージーランドを倒したアイルランドについては「質が高いチーム」とし、スコットランドについても「昨年(6月)は厳しい試合をしたし、まだ(ワールドカップで)負かしていない」とあらためてリスペクトの姿勢を示した。
2015年の大会で初戦の南アフリカ戦を終えた後、中3日でスコットランド戦を戦わねばならなかったように、ティア2国はたびたび厳しい日程に苦しめられる。ワールドラグビーも大会組織委員会も「そこは解消する」と話したが、実際にどこまで改善されるかは明確にはなっていない。
そのことについて指揮官は、「まだ分からないが(どうなろうと)受け入れて戦うしかない。何百万人のファンが(我々を)見て、サポートしてくれる。楽しむ」と前向きに話した。
ジャパンとの対戦が決まったアイルランドのジョー・シュミットHCはホスト国と対戦することについて、こう話した。
「日本代表は短期間に進化してきた。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチはさらに真のエネルギーを注ぎ込むでしょう。チームには卓越した選手たちも増えているように見えます。2年後に向けてさらに進化していくでしょう」
6月の来日に向けて自分たちの戦い方を確立していきたいと話したが、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのNZツアーのために主力を欠くメンバーとなるだけにアウェーでの2つのテストマッチ(6月17日/静岡・エコパスタジアム、6月24日/東京・味の素スタジアム)に警戒を深めている。
「アメリカで戦った後、日本に向かいます。初めて来日する選手もいます。湿度が高く、暑いという自国とは違う状況で、はやいテンポのチームと戦うのは難しいとは思っています」
スコットランドは、今年のシックスネーションズまで指揮を執ったヴァーン・コッターHCが退任して6月からグレガー・タウンゼンドHCが就くため、この抽選会には同国協会のディレクター・オブ・ラグビーを務めるスコット・ジョンソン氏が出席し、「ワールドカップはどのプールに入ろうが大変。その中で、主催国と同じプールで戦えるのは光栄」と話した。
大会全体の試合スケジュール(日時/スタジアム)は大会開幕の2年前前後、9月中旬が予定されている。ジャパンが2019年9月20日、味の素スタジアム(東京スタジアム)でおこなわれる大会の開幕戦に登場するのは決まっている。その相手はアイルランドかスコットランドか、それともルーマニアかプレーオフ勝者か。
歴史を振り返れば、ホスト国と強豪国とのマッチメイクが多い。それに従うなら、桜のジャージーの逆サイドに立つのはグリーンのジャージーか濃紺か。その日繰り広げられる死闘の輪郭がどんどん明確になってきた。