ラグビーリパブリック

香港に苦戦するも、指揮官は穏やか。日本代表の成長はメンタルにあり。

2017.05.06

思い切りのいい走りを見せたWTB尾?晟也。(撮影/?塩隆)

 快勝にはほど遠い内容だった。それでも、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは穏やかだった。
 5月6日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた日本代表×香港代表戦。サクラのジャージーは8,238人のファンに勝利を届けた。しかしスコアは29−17。後半20分までリードを許した(12−17)。
 先手は取った。前半2分、キックカウンターからSO松田力也が好走。そこから左に展開し、初キャップのCTB鹿尾貫太が転がしたグラバーキックをNO8松橋周平がインゴールで押さえた。
 しかしその後の約60分は、香港の方に勢いがあった。この日が今季のアジアラグビーチャンピオンシップの初戦だった相手は前半17分にPGを返すと、その8分後にはラインアウトから見事にサインプレーを決める。ブラインドサイドからWTBユ・カム・シンをSOマシュー・ロスリーの内側に切り込ませていっきにインゴールへ。前半終了間際にはジャパンにトライを許し(WTB山田章仁)たが、後半16分にはスクラムからまたもブラインドWTBを入れる仕掛けで防御を下げ、右展開でCTBテイラー・スピッツが右中間に飛び込んでみせた。
 香港はリー・ジョーンズ ヘッドコーチが「進化を見せられたと思う」と話したように、プロ契約を結んで15か月〜18か月の選手たちがブレイクダウンで激しくプレッシャーをかけ、ジャパンに思うようなテンポで戦わせなかった。
 後半20分以降のフィットネスが足りず力尽きたが、想像していた以上のパフォーマンス。松橋が「SHに昨年まで(自分と同じ)リコーにいたジェイミー・フッドがいて警戒していたのですが、かなり仕掛けてきて脅威でした」と話したように、積極的に前に出る姿勢でジャパンを後退させ、ミスも誘った。
 ただ、敗者の健闘ばかりが目立った展開も、ホームチームには焦りはなかった。ジョセフ ヘッドコーチが苦戦にも声を荒げることがなかったのは、その点を評価したからだ。
 指揮官は「このチームには必要だった試合」と言った。
「タフな試合。香港はとてもフィジカルでした。激しく、フィジカリティーな戦いを80分続けたことには驚いた。選手たちは、このレベルではどのような力量が必要かを知ったでしょう。でも、こういう展開になっても乱れなかったことを評価したい。リーダーたちを中心に、自分たちがやるべきことを取り戻したことを嬉しく思います」
 逆転劇の殊勲者は初めての大舞台だった鹿尾だ。後半21分の同点のトライは、この男の好タックルでボールを取り返したところからWTB山田が走ったものだった。
 落ち着きを取り戻したチームは、この後2トライを重ねた。殊勲の背番号13は「むしろ、よかったプレーはあれだけ」と照れたが、FWに多く怪我人が出た影響もあってFLの位置にも入ったり、80分間ピッチに立ち続けた。
 痛快な80分ではなかったが、指揮官の目にはチームとしての成長を感じたホームでの勝利。来週、同じ相手と戦うアウェー戦では、誰の目にも分かりやすい結果を残したい。
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