ラグビーリパブリック

日本代表で激戦区の「7」に挑む小澤直輝は、「フットワーク」に活路見出す。

2017.05.02

韓国代表との第2戦で力走する日本代表FL小澤直輝(撮影:松本かおり)

 アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)に挑む若手中心の日本代表にあって、背番号7が渋く光る。
 小澤直輝。今大会でテストマッチデビューを果たした、身長182センチ、体重103キロの28歳だ。ここまで2試合連続で先発出場しているのは、身体をぶつけるFWとしての責務を全うしているからだ。
 4月22日に韓国・仁川の南洞アジアードスタジアムでおこなわれた初戦。チームは韓国代表に47−29と勝ったものの、タックル成功率を7割とするなど防御を乱していた。そんななかでも小澤は低く、鋭く刺さる。休養を得たレギュラー候補が復帰しても、その座を譲らなかった。
 29日に東京・秩父宮ラグビー場で韓国代表と再戦する前、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチが起用理由を聞かれてこう応じた。
「前回の試合ではFWで劣勢となりましたが、彼だけは身体を張る部分で際立っていた。いいワークレート(仕事量)で、ほかの選手がついていけるような土台を作ってくれる」
 29日のホームゲームでも、小澤は持ち味を発揮する。攻めてはグラウンドの両15メートル線以内の区画で、前列のPR、HO、LOと鋭い突進や接点への援護を重ねる。守っては、特に接点周辺での火消し役に走った。
 試合前に明かしたこの意気込みを、体現した。
「僕はそこまで器用じゃないので。できることは、身体をぶつけることかな、と。ここで7番に求められていることは、ワークレートとタックル、それとタイトファイブ(前列)と一緒に近場、近場で激しく行くところです。次の試合でも、そこをしっかりと意識してやっていきたいです」
 慶大時代は突進役のNO8で、サントリー入り後は一時スクラム最前列のHOに挑戦するなど、多彩なキャリアを積んできた。国内タイトルを全勝で総ざらいした昨季は、序盤こそなかなか出番を得られなかった。しかし、「調子は悪いわけではなかった」。終盤戦で頭角を現し、その勢いで代表入りを果たした。
 ナショナルチームの一員となった思いを、当の本人はこう語る。
「チャンスをもらったところを見ていただいて、(代表に)呼んでいただいた。サントリーにはほかにもいいバックロー(FL、NO8)がいるので、その人たちにも恥じないプレーをしたい」
 現在、日本代表のオープンサイドFL候補は多士済々だ。
 ARC第2戦でNO8だった松橋周平もこの位置でプレーでき、今回のスコッドで試合出場を伺う金正奎とともにサンウルブズにも在籍。2人はジャパンと同種の戦術を採用する日本のチームで、国際リーグのスーパーラグビーを経験している。そして現在、海外遠征中のサンウルブズの本隊へは昨秋のジャパンのツアーで躍動した布巻峻介がいる。
 いずれも小澤と似たサイズのファイターで、攻守でそれぞれに特色を示している。
 さらにはスーパーラグビーのチーフスでプレーするリーチ マイケルら、突破力もある海外出身者がその座を狙う可能性もある。有力者との定位置争いについて、スーパーラグビー未経験の小澤はどんなビジョンを抱いているのだろうか。
「皆、素晴らしい選手で、身体を張るという前提の部分を持ち合わせている人が多い。そこで自分がどう勝負していくかは、模索しながらやっていきたいと思っています。まずは求められていることを一番、激しくやる。ワークレート、タックル、身体をぶつける部分です。そのうえで個人としては、密集地帯のなかでもフットワークを使ったり…」
 ここでの「フットワーク」は、きっとリプレイ映像などで見返すことで発見される渋い仕事でもあるという。
 人垣に突っ込む際に足を細かく動かし、1人ひとりのタックラーをセンチ単位でかわす。攻防の境界線であるゲインラインで、防御を自分の懐へ引き寄せる。その先で、大外などにスペースを作り出したい。
「やはり密集地帯なので大きく抜けることはなかなかないかもしれないのですけど、ここでゲインラインを取って外が余れば、それが一番いい仕事になると思う」
 置かれた立場を咀嚼し、かつ爪痕を残すプロセスを具体的にイメージしている。まずは5月6日に秩父宮であるARC第3戦(対香港代表)出場に向け、都内での練習に集中する。
(文:向 風見也)
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