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「週に40本タックル」ノルマ課す日本代表 ジョセフHCは教訓から発展誓う

2017.04.27

29日の韓国代表戦へ向けトレーニングする日本代表のジェイミー・ジョセフHC(撮影:松本かおり)

 4月26日。東京・辰巳の森海浜公園ラグビー練習場でのトレーニングを終えると、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)が記者団に捕まる。穏やかそうな顔つきで、いくつかの質問を受ける。
 主な話題は、29日に東京・秩父宮ラグビー場であるアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の第2試合の出場選手についてだ。
 個別の選手について質問が及ぶと、本人は「まだメンバーを決めていないが…」と前置きをしながら答える。もっとも、試合の登録メンバーはすでに発表済み。そのことを確認すると、指揮官はほほ笑んだ。
「本当? じゃあ、いままでうそを言ってしまっていたね」
 対外的な公式発表がいつなされたかより、目の前のセッションに夢中なのだろう。
 さかのぼって22日、仁川の南洞アジアードスタジアムでのARC初戦では、韓国代表に47−29と勝ったもののエナジーを感じなかったという。次戦に向け、自ずと練習への視線は鋭くなったか。
 ジョセフHCは特に、7割台だったタックル成功率を問題視。ぶつかる際の激しさと、守備組織を機能させるコミュニケーションを改めて徹底した。
 スーパーラグビーのサンウルブズの主将で現在調整中の立川理道によれば、「(1週間で各選手)40本タックルする」という目標設定がなされたようで、全体セッション後はタックルの居残り練習があちこちでおこなわれていた。
 ジョセフHCは改めて言う。
「先週のテストマッチは勝ったけれどいいパフォーマンスはできなかった。ディフェンスも機能しなかった。今度はいいパフォーマンスをしたいという気持ちだけです」
 初戦とは8名、スターターが入れ替わった。まず注目されるのは、31歳のWTB、山田章仁。若手中心で編成される今度のジャパンにあって、現状では唯一のワールドカップ出場経験者は背番号11をつけ先発予定。同大会2年ぶりの出場を見据える。
「30代前半ですが、あと3年ぐらいプレーできるよ、というところを見せて欲しい」とは、ジョセフHCの弁。通算18キャップの本人は、6月のアイルランド代表戦出場へのアピールを誓った。
「いい準備、できてます。このメンバーのなかでは(キャリアは)長いですけど、僕自身としては代表のキャリアは長くはない。だからチャンスがあれば…。6月をターゲットにしているという点では、ここでしっかりとアピールしたいです」
 帝京大ではSOで活躍したパナソニックのルーキー、松田力也は、インサイドCTBとして今大会初先発。松田と同学年で昨季からパナソニックに在籍するSOの山沢拓也は、初のベンチ入りへ静かに闘志を燃やす。
 期待の若手BKについて話が及ぶと、ジョセフHCはこう言葉を選ぶ。
「(松田は)どこででも起用できます。ユーティリティプレーヤーというのはコーチにとって貴重です。(山沢は)試合を見ながらどこかのタイミングで起用すると思いますが、ポテンシャルの高い選手です。…まずは、誰が、どうとかではなく、しっかりとチームに戦う準備をさせたい。先週は意気込み、気持ち、スキルを持ち合わせたプレーができなかった。そこら辺を、しっかりと修正したいです」
 NO8には、昨季の国内トップリーグで新人王となった松橋周平が入る。サンウルブズでタフな公式戦に出場し、しばしのリフレッシュを経て国際舞台へ復帰。当の本人は「いまの自分のプレーを映像で振り返ることができた。まだまだ、足りないところがある」と、レベルアップを誓った。
「ディフェンスでは低いタックル、アタックではフットワークを使った前に出るプレーを。(スーパーラグビーの舞台でも)ヒットしたら前に出られたんですが、フットワークを使って(タックルの芯を)ずらせばもっと簡単に前に出られたところもあって。しっかり相手と前を見て、プレーしたいです」
 ジョセフHCは「先日の試合では、11人が初のテストマッチでした。そういうメンバーで試合をしたことで、新たないい発見、教訓を得ました。ここから発展したいです」と、ここまでの着実な歩みを強調する。29日の14時7分にキックオフされるホームの韓国代表戦で、充実ぶりを証明したい。
(文:向 風見也)
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