ふたりががりのタックルで韓国の突進を止めにいくNO8徳永(右)とSO小倉。
1週間後のホームゲームでディフェンスの進歩は見られるか(撮影:出村謙知)
ジョセフ・ジャパンにとって、初めてのアジアでのテストマッチ。
あるいは、いきなり大きな命題を突きつけられたのかもしれなかった。
日本はアタックし続けるのか、それともディフェンスもするのか。
「アタックのことを考えすぎだ」
11人が代表デビューという若いチームは、総じてワン・オン・ワンタックルを決められず、ディフェンス網にはいびつな穴があり、そこを突かれた。
本当は腹わたが煮えくり返っていたのかもしれないが、表面的にはいつものように温厚な態度のまま、ジェイミー・ジョセフHCは昨年2試合でトライを与えなかった韓国に5トライを奪われた本当の理由についてそう分析した。
「まずは1対1でタックルを決める。あるいは、一緒にタックルする。次の試合に向けて、ディフェンスに関してできることをすべてをやる」(同HC)
もちろん、試合の中で全くディフェンスをしないということはあり得ないが、間違いなく、わずか1年半前までの日本代表はボールをキープし続ける攻撃ラグビーを指向していた。
それに対してジョセフ・ジャパンでは、キックも多用し、必ずしもボールキープにはこだわらず、むしろボールを積極的に放していくことで、局面の打開を図ろうとする場面もしばしば。
「キックも使って、意図的にアンストラクチャーな状況を作って、その中でスペースを見つける」(SH流大主将)
キックとキックチェイスの精度を上げることで、全く相手にボールを与えずに再び攻め始めるケースもあるが、基本的にいったんはディフェンス局面になってからのボール再獲得、そして再アタックというのが、ジョセフ・ジャパンのアンストラクチャーラグビーの流れとなる。
どうしたって、こちらの意図としてディフェンスの場面は増えるはずだが、アジアでの船出だった韓国でのアウェー戦では、その守りがまるでダメ。
「ジャパンのジャージーを着ている以上、(タックルに)もっといかないと」(同主将)というレベルでは話にならなかった。
間違いなく、ジョセフHCが提示するのはスマートなラグビーだが、その前提にあるのは「アグレッシブでディシプリンのあるディフェンス」。
彼が作り上げたハイランダーズのラグビーを振り返ってみても、激しいディフェンスがベースにあることは容易に理解できる。
韓国戦の最初のアタックでいきなりトライを奪ってみせたように、このチームがトライを取る能力に長けているのは確か。
逆に、いとも簡単にトライを取ってしまったことで、ジョセフ・ジャパンラグビーの本質=激しいディフェンスが基本という絶対鉄則をどこかに置き去りにしてしまったのかもしれない。
15人制と同じように、新たにニュージーランド出身の指導者を迎えて、同じように若いメンバーで新しいスタイルにチャレンジしている男子セブンズ日本代表は、シンガポールセブンズでも最下位に沈むなど苦しい戦いが続いている。
そのカラウナ・ジャパンのスタートだった昨年12月のドバイセブンズ時、次々にタックルを外される若い日本人選手に対して、ダミアン・カラウナHCは厳しく言い放った。
「経験がないと言っても、彼らはラグビープレーヤーであり、タックルの仕方は知っているはず。一番は気持ちの問題。タックルをしたいのかどうか」。ラグビー王国ニュージーランドでは当たり前のことが、日本の若い選手には根付いていないのが現実なのだろう。
穏やかに「アタックのことを考えすぎだ」と語ったジョセフHCも同じ気持ちだったのかもしれない。
日本代表のあるスタッフは「彼らはキャップ1のまま終わるのではないか」と漏らしたが、温厚なジョセフHCが公言するように「次のチャンスは与えられる」のは確かだろう。
ただし、セカンドチャンスでも同じ失敗をすれば、3度目がないことは覚悟しておいた方がいい。
1週間後の秩父宮で、まわりと常にコミュニケーションを取りながら、死にもの狂いでタックルにいくヤングジャパンの姿が見られたなら、15年ぶりに韓国に5トライを奪われるという失態も意味があるものになる。
(文:出村謙知)