ラグビーリパブリック

学びの場。刺激の時間。トップチームコーチ&エデュケーター講習会。

2017.03.06
知識と絆を深めた参加者たち。
 わかっていると思っていたことでも、忘れていたことがあった。
 知らなかったことや発見も。
 数日間に渡る講習会を終えた最後、参加者たちはハドルを組んで、冒頭のような言葉で学びの時間の感想を口にした。
 3月4日(土)、流通経済大学のグラウンド。トップチームコーチ講習会が開催されていた。同講習会は日本協会主催で、この3日目が最終日。エデュケーター(コーチを指導する人)たちのセミナーも並行しておこなわれ、その存在はコーチたちを刺激した。
 エデュケーターたちの経験値をさらに高めた今回の機会は、ワールドラグビーの主催だ。日本協会のコーチングディレクターで、ワールドラグビーのトレーナー(エデュケーターの指導役)資格も持つ中竹竜二氏が同講習会をリードした。
 新シーズンから東芝の指導にあたる廣瀬俊朗BKコーチ。2016年度シーズンを最後に現役を引退したヤマハ発動機の田村義和もいれば、同チームのSO大田尾竜彦(プレイングアドバイザー)もいた。エデュケーターには、ゴリこと野澤武史氏や各カテゴリーで活躍中の人たちが何人も。最終日は室内での講座とグラウンドに出てのコーチングの実践がおこなわれた。
「いま、ゴールを設定してから話し始めましたか」
 講座の中で、中竹コーチングディレクターがそう問いかけるシーンがあった。パートナーと組んで、1分間の自己紹介をおこなった後だった。
「話し始める前にゴールを設定しないと、必ず脱線します。近況を伝えるのか。あるいは、家族のことを話すと決めたり。まずはフレーミングが大切です。枠を決めて、限られた時間の中で何を話し、話さないかを決定する。コーチングも同じ。何をやって、何をやらないか選別する」
 人間は口で話すのではなく、脳で話します。
 そんなことが強調されたり、学び続けることの大切さをあらためて伝える時間を経て、コーチやエデュケーターはグラウンドに出た。
 今日はたくさん失敗し、たくさん学んでください。
 中竹コーチングディレクターからそう送り出されたコーチたちは、グラウンドに出ると各自4分間を与えられた。その場その場で提示されるテーマについて、それぞれが自分なりのコーチングを考えた。
 例えば「ターンオーバーについてのコーチングを」と中竹コーチングディレクターが言う。誰かが立候補する。そのコーチはすぐに4分間セッションのゴールを設定し、練習メニューを全員に伝え、実践するのだ。
 そのコーチングの現場を見つめ、セッション後にコーチと話し、個々のレビューをするのがエデュケーターだ。
「今回のコーチングのゴールをどこに設定しましたか?」
「キーファクターを効果的に使うことができましたか?」
「そのふたつがごちゃごちゃになっていた気がします」
 そんな指摘ょすることもあれば、「みんなが積極的に参加できていた点がよかったですね。休んでいる人がほとんどいなかった。稼働率が良かったと思います」と、コーチが気を配った点について高評価を与えることも。そんなサイクルが参加した13人のコーチに対して繰り返され、話す方も聞く方も刺激を受け続けた。本当に、たくさんの失敗がたくさんの学びを生んだ。
「コーチング後のレビュー時、コーチの真正面に立ち、取り調べのような感じになってしまった人はいませんでしたか?」
 中竹コーチングディレクターは、エデュケーターたちにもそう問いかけた。
「向かい合うときの角度、互いの距離感だけでも、相手の受け取り方はまったく違います。エデュケーターに限らず、こういう場で重要なことは信頼されること」
 刺激し合って向上する関係性をより高めるためには、そういった細部への配慮を忘れてはいけない。
「コーチは勝手に育たない」と言う同ディレクターは、指導者たちには多くのことを共有し、サポートする役目の人たちが必要と考えるから、そのスキルを持った者を増やす今回のような催しに積極的に取り組んでいる。
「内容もそうですが、同い年ぐらいの人たちの学ぶ意欲がいい刺激になった」
 将来を見据える大田尾の言葉だ。
「(自分の考えたメニューをする人たちを)しっかり見ようと一箇所で見つめましたが、立つ位置を変えて、角度を変えて見るのもいい。そんなアドバイスを受けて、なるほどな、と思いました」
 廣瀬コーチも学んだ。
 毎年、継続しておこなっている。この講習会で学んだコーチ、エデュケーターが、全国に知識と考えた方を広めていく。この取り組みのゴールのひとつは、将来的に日本代表のコーチ陣を日本ラグビーの中で育った人材で構成することだ。
   
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