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サンウルブズの強みはスクラム! と言えるまで…。伊藤の感じた手応えと課題

2017.03.06

キングズ戦、ボールキャリーも力強かった伊藤平一郎(Photo: Getty Images)

 国際リーグであるスーパーラグビーへ日本から参戦して2シーズン目のサンウルブズは3月4日、シンガポール・ナショナルスタジアムで第2節をおこない、キングズに23−37で敗戦。開幕2連敗を喫した。
 前年度2勝だったキングズに敗れたことは、同1勝のサンウルブズにとって重い現実だった。もっとも光明の見えたプレーもいくつかある。そのうちのひとつが、スクラムだ。
 FWが8対8で組み合う攻防の起点であるスクラムに、前年度のサンウルブズは難儀していた。専門コーチがいなかったこともあり、実戦で自軍の型の遂行ができるまでに時間がかかった。
 今季は、長谷川慎スクラムコーチが就任。昨秋の日本代表ツアーにも帯同した理論派が、密に固まる手法をインストールした。実質的なスクラム練習のスタートは2月5日に始まった福岡合宿と、準備は急ピッチで進められた。早速、成果が示されつつある。
 伊藤平一郎。国内所属先のヤマハでも長谷川コーチの指導を受けた26歳は、最前列の右PRとして開幕から2戦連続で先発中だ。東南アジアでのゲームを終えると、こう宣言した。
「スクラムを武器にできるチームにしていきたいです」
 キングズ戦の前半16分頃。この日最初のスクラムから、伊藤は「やれるな、というイメージはありました」という。
 敵陣22メートル線上右で組まれたこの1本は、2度の組み直しがなされた。特に伊藤のサイドが崩れた直後の、2度目の「アゲイン」の際、レフリーのマリウス・ファンデルヴェストハイゼンが逆側から伊藤の近くへ回り込むこととなった。
 レフリーの立ち位置の変化に、伊藤本人は「特に、何も」と冷静だった。崩れた理由は自分にないと自覚しており、対面を「崩れるし、やや内側に組んでくる」と分析。こちらはいつも通り自軍の横、縦のつながりを意識し、前に出た。相手の塊を押し込んだ。
 以後もサンウルブズはスクラムを優位に進め、同26分には相手のコラプシング(故意に塊を崩す反則)を誘った。ただ伊藤は「手ごたえはありましたが、反省もありましたね」と続ける。
「スクラムを武器に」という思いを有言実行するには、ここで満足するわけにはいかない。この夜は、準備が整わぬまま組んだスクラムは消化不良に終わったようだ。
「何本か、できていない。そこはまだ、8人で組めていないのかなという感じです」
「スクラムを武器に」とは、試合全体の総括をする際に発した言葉だ。攻守の連携やプレーの精度について触れるさなか、あえてスクラムの話題を強調する。そこに、背番号3の矜持がにじんだ。
「(試合を通して)やりたいことはできていたのですが、そのやりたいことが最後までできない。ミスで終わったり…。これが現状ではないかと思います。(今後は)より(プレーの)正確性を高めて…あとは、スクラムを武器にできるチームにしていきたいです。やれると確信したので」
 サンウルブズはこの日、南アフリカへ渡った。現地時間11日のチーターズ戦(ブルームフォンテイン・フリーステートスタジアム)を皮切りに、2か国3会場で巨躯揃いの南アフリカ勢とぶつかる。伊藤はこう見据えた。
「アウェーで南アフリカのチームと…。どうなるかはわからないですが、本当に強い奴らとやれるのは楽しみです」
 身長175センチ、体重118キロ。昨秋初参加した日本代表のツアーでは、ジョージア代表の強烈なプッシュに舌を巻いた。試合には勝ったが、スクラムでは負けたか。「1人ひとりが大きく、8人で押す意識が高い。僕らが目指すものに近いかな、という感じでした」。いったん本物を体感した以上は、それに近づき、追い越したいだろう。
 ジャパンと連携するサンウルブズでの活動を通し、メイド・イン・ジャパンのスクラムを世界トップに押し上げる。
(文:向風見也)