国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦2季目となるサンウルブズは3月1日、今季初の遠征に出発。シンガポール、南アフリカを約4週間で転戦する。
2月28日には「シンガポール遠征メンバー」として、離日する29名のリストを発表した。その輪に加わった1人が今季新加入の庭井祐輔だ。スクラムを最前列中央で組むHOを務めながら、球が動く場面でもタックルや肉弾戦への絡みつきで魅せる。
日本代表初選出を目指す身長174センチ、体重102キロの25歳が、スーパーラグビーデビューにも意欲を燃やす。
「遠征に行けることはとても光栄に思います。どこかでチャンスは回って来ると、待ち続けています」
この日は午前中、スクラムトレーニングをおこなった。前後で組み込んだ塊同士の2対2では、本番で大男をプッシュするのに必要な底力を鍛える。8対8での試合形式のセッションでは、各ポジションのフォームや足の位置を確認しながら白熱した押し合いを繰り返す。
長谷川慎スクラムコーチの唱える8人一体の形は、徐々に浸透されているのだろう。主力組対控え組といった様相のなか、庭井が入る控え組も何度か優勢に立った。
主将を務める国内所属先のキヤノンでも、ギデオン・レンシングFWコーチのもとスクラム練習に注力している。2月1日に始動したサンウルブズも、やはりスクラムへ熱を込める。長谷川コーチが「お互いが100パーセントでやっているから、いい雰囲気。皆、同じ組み方が頭に入っているからどちらが勝つかはわからないんです」と話すかたわら、庭井もこう続ける。
「キヤノンでもこういう感じでやっているのですが、スクラムというものに対する皆の意識が変わってきました」
同じHOのポジションでは現在、日本代表の木津武士がコンディショニング調整のため一時離脱中。庭井は現在、日本代表前主将の堀江翔太、昨秋初の代表入りを果たした日野剛志と定位置を争っている。
レベルズの一員としてもスーパーラグビーを経験した6歳上の堀江からは「視野の広さ」を学び、立命大時代に同じ関西の同大の2学年上として対戦してきた日野には「爆発力」を感じ取っている。
2人を語る言葉には、向上心と負けじ魂がにじんだ。
「日野さんとは大学時代から試合をしていて、負けたくないと思っています。慎さんと同じヤマハにいる分、慎さんのスクラムを熟知されている。フィールドプレーでも爆発力あって…。チャレンジしていかないといけない。これまでは先輩がいてもライバル視するようなところもあって、観て盗むというタイプでした。ただ、堀江さんとはいろいろと教えてもらいながら練習している。新鮮な気持ちです。堀江さんは(相手防御の背後に)キックを蹴られていますが、それはグラウンド全体を観ているから。僕も視野を広げていけば、もっと(成長する)可能性も広がっていくのかな…と」
チームは2月25日、東京・秩父宮ラグビー場での初戦で前年度王者のハリケーンズに17−83と完敗。ここではメンバー入りを果たせなかった庭井だが、視線の先には3月4日、南アフリカのキングズとの第2節を見据える(シンガポール・ナショナルスタジアム)。
この日は午後の練習後も、長谷川コーチの仕切る居残りスクラムトレーニングに参加。初年度からサンウルブズにいる拓大4年の具智元、トヨタ自動車入社1年目の浅堀航平ら若手とともに軽い強度でぶつかり合い、相手と組み合う際に足を後退させない意識などを植え付けていた。
貪欲に強さとチャンスを求め、列強に刺さりたい。
(文:向 風見也)