シックスネーションズ第3節(2月26日)、参加国中唯一の2連敗中のイタリアをホームのトゥイッケナムに迎えたイングランド。前半を5−10とリードを許して折り返しながら、後半で一気に突き放し、36−15と4トライ以上挙げてボーナスポイントも獲得しての大勝となった。
初戦のフランス戦、2戦目のウェールズ戦と立ち上がりの悪さが目立ったイングランドは、格下のイタリアを相手にも開始後20分間はほとんど自陣に釘付けにされる。しかし、こんな時こそ訪れたチャンスを確実にものにするのが現在のイングランド。23分には、ラインアウトからのドライビングモールで、PRダン・コールがこの試合最初のトライを挙げる。
この日のイタリアは、ディフェンス時にタックラーの次のサポートプレーヤーが密集に参加せず、「ラックを形成しないことにより、オフサイドラインを発生させない」という、奇をてらったとも言えるプレーを幾度となく実行。2次、3次攻撃の際に、通常であればオフサイドとなる位置にディフェンダーが現れ、イングランドの選手は明らかに戸惑った様子を見せる。イタリアのヘッドコーチ、コナー・オシェアは「我々は負ける為にここに来たのではない。今の我々がイングランドのようなチームに勝つ為には、何か違ったことをやらなければならない」と、この日の戦術の理由を話した。
この戦術が功を奏した場面も確かにあったが、それ以上に前半はイングランドの反則やミスが目立ち、イタリアペースで試合が進む。そんな流れの中、32分にはSOトンマーゾ・アランがドロップゴール、39分にはゴールポストに当たり跳ね返ったペナルティキックをWTBジョヴァンバティスタ・ヴェンディッティが押さえてトライ。ゴールも決まり、5−10とイタリアリードでハーフタイムとなる。
後半に入ると、イングランドは攻撃のテンポを上げにかかり、43分にはペナルティからの速攻で、SHダニー・ケアがトライ。10−10と同点に追いつく。立て続けに、46分にはイタリア陣でのラックから素早く展開し、WTBエリオット・デイリーがトライ。ゴールも決まり、17−10とイングランドは逆転に成功。このままイングランドが引き離すかにも見えたが、59分にはCTBミケール・カンパニャーロがが甘いタックルを立て続けに突破し、一矢を報いる。ゴールは失敗するが17−15とし、2点差で最後の20分を迎える。
イングランドはこれまで、試合最後の20分前後でベンチメンバーを投入し、試合の流れを変えるという戦術で接戦をものにしている。この日も、55分以降、次々と交代のカードを切る。69分にはゴールライン前での激しい肉弾戦から大きく外へ展開し、WTBジャック・ノーウェルがコーナーにトライ。更に72分にはCTBベン・テオ、79分には再びノーウェルがゴールラインを駆け抜け、試合は、36−15で幕を閉じる。
勝ちはしたものの、前半リードを許し、ミスも目立ったイングランド。更にはイタリアの非正攻法的な戦術もあり、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは試合後の会見で不満を露わにした。「こんな試合は、ラグビーとは言わない。自分が観客だったら、入場料を返せと言っただろう」と、イングランドのパフォーマンス、イタリアの戦術ともに、納得のいかない心境を語った。対するオシェア ヘッドコーチは、「この戦術は、クラブゲーム、テストマッチでも他のチームに使われたこともあるもので、イタリア代表がやったからと言って批判されるのは、フェアではない」と、批判も意に介さない。
55分からの出場ながら2トライを挙げたノーウェルは、前半の展開について「試合を外から見ていると、ああすればいい、こうすればいい、といろいろ言いたいこともあるだろうけど、グラウンドにいる者からすれば、そんな簡単な話ではない。前半、明らかに苦戦し、後半に流れを変えることができたが、だからと言って選手たちが中途半端な気持ちでプレーしていた訳ではない」。ユーティリティプレーヤーとして、今後WTB以外でのプレーも期待されているデイリーは、「とにかくアピールを続け、試合に出て、チームに貢献するだけ。好きなポジションとか、そういう考えは始めから持っていない」と、チームプレーヤーとしての意識の高さを見せる。
唯一の3戦全勝にボーナスポイントと、結果上は文句の付けようのない成績で2連覇を目指すイングランド。しかしながら、立ち上がりの悪さ、安定性に欠けるパフォーマンスなどの課題を抱え、次節では絶好調のスコットランドと対戦。大会2連覇への道のりは、容易ではない。
(文:竹鼻 智)