2月21日、都内にある辰巳の森ラグビー練習場。国際リーグのスーパーラグビーへ日本から加わって2季目のサンウルブズが、全体トレーニングを始める。
サイモン・ジョーンズ ストレングス&コンディショニングコーチが、ウォーミングアップを指揮。合図を出し、選手をしゃがませ、起き上がらせる。
機敏に上下動を繰り返す群れにあって、1人の動作がややスローだった。堀江翔太だ。前年度は主将だった31歳のHOは、「コンディション調整中」を意味する赤いビブスをつけていた。
「調整させてもらいながら、という感じです。そこまで(強度は)上げずに」
それでも淡々と、開幕戦を見据える。25日にはホームの東京・秩父宮ラグビー場で、ハリケーンズと戦う。ニュージーランド・カンファレンス所属の前年度王者だ。
2013年から2シーズン、オーストラリア・カンファレンスのレベルズにいた堀江は、相手の印象をこう語る。
「強いですよ。フィジカルもあって、アンストラクチャー(攻守逆転後などの即興的な攻撃)も得意。僕らも、その部分で戦えるようにはしたいですね」
18日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州。トップリーグオールスターズとの壮行試合は24−12と競った。今季初の実戦だったこの日を受け、堀江は「自分らの仕事を最後までやり切れるように、という話をしました」。各ポジションで定められたすべきことを改めて理解し、遂行するよう促したのだ。
例えば前半17分、トップリーグオールスターズのWTB山田章仁にこの日初のトライを奪われたシーン。タックルした選手の起立の遅れなどが積み重なってか、最後の最後に数的優位を与えていた。試合直後の堀江は「頑張りすぎて、ブレイクダウン(ボール争奪局面)に人が集まっていた」と反省した。
それから3日が経ったこの午後も、おおらかな口調に厳しさをまぶす。
「やっぱり、違う動きをした選手、スキルが上まで達していない選手もいた。スキルを上げて、役割を果たせるようにという意見は出しました」
細やかなレビューをもとに、建設的な取り組みを重ねる。自身がリードするスクラムでも、その意思を貫く。
昨秋から日本代表に入閣した長谷川慎スクラムコーチのもと、最前列の密着感や後方からの押し込みを丹念に確認してきた。
「(組んだ時に)間違っていたら、何が間違っていたかがすぐわかるようにもなってきた」
5日から約1週間あった福岡合宿などを通し、組み方のコンセプトと詳細を詰めた。だからこそ、正解と不正解の違いを組みながら把握するに至ったのだろう。
「もっと自信を持ってできると思いますよ。去年は形がなく選手だけで頑張ってきたところ、今年はスクラムにも戦術、戦略というものがある」
件のトップリーグオールスターズ戦では、前半36分、そのスクラムで手ごたえをつかむ。
敵陣ゴール前の1本をプッシュし、NO8のエドワード・カーク主将のトライを演出しているのだ。
長谷川コーチの求めるクオリティを保てば、ここ一番の好機で乱れた相手を圧倒することもできる…。そんなイメージを確立できたか。
「前半からプレッシャーをかけ続けることで、タイミング次第でああいうスクラムも組める。全部が全部ああいう(圧倒できる)スクラムにはできないと思いますが、いいタイミングでああいうスクラムを組めるように…」
この日の練習では、51人いるスコッドのうち2桁の日本代表経験者が練習参加を回避。昨季を1勝1分13敗で終えたサンウルブズは、引き続き選手層の維持に気を張っている。それでも堀江は、「シーズンは長い。ここで焦っても…という部分もあると思う」。地に足をつけ、かつ前向きに本番へ臨む。
(文:向 風見也)
21日、個別に練習する堀江翔太(撮影:見明亨徳)