国際リーグのスーパーラグビーに加入2年目となる日本のサンウルブズは2月1日からの3日間、都内で今季の初合宿をおこなっている。
「オーストラリアにいる間も、日本が恋しかったです。飛行機に乗っている間も、日本へ来るのがずっと楽しみだった」
こう語るのはエドワード・カーク。1月27日に再来日した2季目のFLだ。献身的なプレーと明るい人柄で、初年度からファンやチームメイトの心をつかんでいる。
今季は、立川理道とともに共同主将を任される。ジャージィと同じオレンジ色の髭はそのままに、笑顔を浮かべる。1つひとつの肉弾戦でタフに戦うことが、自分なりのリーダーシップだと言いたげだ。
「主将は、ただの役職の名前。(就任後も)去年やってきたことと同じことをやりたい。とにかくラグビーを楽しみたい。フィールドでのプレーで体現したい…。オーガナイゼーション(統率)が機能していれば、1人、2人のリーダーが引っ張るという形にはならないと思います」
1月28、29日に日本選手権決勝などの公式戦に出た選手など、複数名は別メニュー調整だった。シーズン中の個々のコンディション管理については、多くのメンバーが「コントロールしてくれると聞いている」と期待を口にする。
そんななか、日本代表でもある司令塔候補の田村優は、「試合に、出すぎない」。国内のNECでフル稼働したところ、著しいダメージを感じたという。メンバー選考の全権がフィロ・ティアティア ヘッドコーチにあることを承知のうえで、出場時間のコントロールを期待。身体作りに関しても「お互いに話しながら、僕のトレーニングを組んでもらえれば」。各選手に応じた、オーダーメイドのトレーニングプランを心待ちにする。
とはいえ、ただただ周りに期待するだけではない。全体練習が終わればボール2つとキックティーを片手にキック練習に励む。
「(フォームについて)微調整はあると思いますが、大きくは変えず。しっかり練習をして、徐々によくなるように」
初日の攻撃練習の折は、攻撃ラインに入った選手の体勢を修正。パスを投げる方向へ身体を向けてしまいがちな外国人選手がいれば、身振り手振りを交え、相手に正対して走るよう助言した。
「あれをやってくれないと、僕のパフォーマンスも落ちるので」
1人ひとりが相手をひきつければ、その周辺にスペースができる。スペースが広ければ広いほど、自らのキックやパスの選択肢が広がる…。司令塔の「パフォーマンス」は、チームの「パフォーマンス」につながる…。短いフレーズに、その意志をにじませた。
自身も参画した初年度は、初来日のメンバーが多いなか始動約1か月後に開幕を迎えている。準備期間の確保などに苦慮したなか、ストラテジーリーダー(戦略を皆に落とし込む役割)を全う。いい仕事をするのに必要な準備を、丹念に重ねる。
「去年もいいチームができたのですが、去年よりも明らかにいいチームになるのは間違いない。去年からいる選手の責任は大きいと思います。(いい文化を)受け継いでやっていきたいです」
初顔合わせのメンバーも多いなか「静かだな」と気を引き締めるのは、田中史朗。昨季までハイランダーズ(ニュージーランド)でプレーした日本代表SHだ。本来は見学を許されていたパナソニックの一員だったが、2日の実戦練習に参加。攻撃を滑らかにした。
「能力の高い選手はたくさんいるんですが、コミュニケーションの部分ではまだまだ声が出ていないのかな、と思います」
自分より後ろの選手から立ち位置や相手防御の様子を聞くことで、より周りと連動できる…。15対15の団体球技にあって、田中はこの「コミュニケーション」を大事にしている。芝の上で、ホテルの部屋で、その「コミュニケーション」の重要さを示していきたい。
「常に自分自身が声を出したり、ミーティングでそういうこと(声を出し合うことが大事だという話)を伝えていければ。(上達したいという)意識は皆、高いと思うので」
ハイランダーズを率いていたジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチらの思いを受ける形で、サンウルブズ入りを決意した。「まずは僕たちがチームをしっかりとまとめ、世界と戦うということを意識して行きたい」と静かに意気込んでいる。
「自分も(日本の)代表として世界に勝ちたいです。それにサンウルブズという日本のチームが世界を圧倒すれば、子どもたちにも夢を持ってもらえる」
チーム愛を強調する闘将、自分を見つめる指揮者、弛緩を見逃さないダイナモ。それぞれの立場でクラブを盛り立てる。
(文:向 風見也)