ラグビーリパブリック

サントリー決勝へ。帝京大の猛攻受け、何を改善したのか。

2017.01.23

帝京大のFL飯野晃司にタックルするサントリーのCTB中村亮土(撮影:早浪章弘)

<日本選手権大会 準決勝> 
サントリー 54−29 帝京大
(2017年1月21日/大阪・東大阪市花園ラグビー場)
 連続攻撃を看板とするトップリーグ王者のサントリーに対し、大学選手権8連覇中の帝京大はなかなか球を渡さなかった。
 14点差を追う前半30分台。大きな展開で右タッチライン際の空間を破り、以後もじりじりと接点を重ねる。サントリーの反則を誘い、ペナルティキックを敵陣ゴール前左へ飛ばす。空中戦のラインアウトから、かねて社会人級と評判の強靭なFW陣がラッシュを仕掛ける。最後はHO堀越康介が止めを刺すなどし、スコアを7点差に詰めた。
 好ランを連発したFB尾崎晟也は、自軍の狙いをこう明かした。
「アタックの時間が増えるほど、チャンスが出てくるかなと」
 続く40分。そのFB尾崎が、自陣ゴール前左でパスを呼び込む。
「まずは1人に対して、仕掛ける」
 目の前に立つのが大柄な選手だったため、持ち前のキレで勝負できると踏んだ。抜き去った。
「(その周りの)空いているスペースを意識する…」
 芝を裂く。敵陣22メートル線付近中央まで。その間に追っ手をかわすこと2人。WTB竹山晃暉のトライを誘発。21−21。同点でハーフタイムを迎えたのである。
「ボールを動かし、ラン、パスで切る。それがよかった」
 後半も帝京大は、勝負の格を保たんとした。例えば息の上がるゲーム終盤、FL飯野晃司副将がビックタックルを放つ。
 もっともサントリーとて、本来はSO小野晃征いわく「相手が大学生でも、高校生でも、中学生でも、自分たちにフォーカスする」人々だ。気を引き締め、地力の差を示す。
 後半開始前、SO小野は「相手はあまりキックしていない。ディフェンスはもっと前で…」。ランとパスを主体としていた帝京大を前に、敵陣での防御時も厳しい圧力をかけるよう打ち合わせたという。
 背後にキックを蹴られる心配が薄いのなら、まずは目の前の走者をつぶしにかかる。その意はキックオフ早々の鋭いタックルと化し、帝京大のWTB吉田杏を敵陣22メートル付近の左タッチラインの外へ出す。
 直後の2分、ラインアウトからのモールでHO中村駿太が勝ち越す。
 SO小野がゴールキックでスコアを28−21とするなか、FB尾崎は相手の変質をこう感じた。
「ディフェンスの圧力が強く感じた。そこでこちらは受けて…」
 6分にSO松田力也副将のペナルティゴールで28−24とする帝京大を向こうに、サントリーは攻めても勢いを加速させる。
 接点周辺を破るダイレクトプレーを有効打に使い、12分には優勢のスクラムでペナルティトライを奪う。続く15分には、ラック周辺でのSH流大主将のパスへWTB中?隆彰が飛び込む。SO小野がいずれの機会でもゴールキックを決め、得点板に「42−24」と刻む。
 日本選手権に学生が出る当面最後の試合として注目されたなか、サントリーが彼我の立ち位置を再認識させたのだった。
 勝者は29日、東京・秩父宮ラグビー場でのファイナルで前年度王者のパナソニックに挑む。
(文:向 風見也)
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