大学選手権8連覇を達成した帝京大4年の飯野晃司副将は、卒業後、サントリーへ入る。
1月21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で日本選手権準決勝に挑む。相手は、そのサントリーである。
もっとも当の本人は、あくまでこの思いを貫くのみだ。
「いまは帝京大の選手。チャレンジャーという思いを込めていきます。まずは目の前のことをしっかりやる」
9日、東京・秩父宮ラグビー場での大学選手権決勝。ラストワンプレーは、飯野副将の一撃だった。
33−26。東海大を相手にわずか7点リードで迎えた最終局面。FLを務める闘将が、密集脇で低いタックルを繰り出した。落球を誘う。ノーサイドの歓喜を迎える。
「チーム全員がトライを取らせないという気持ち。結果的に僕のタックルが最後ですが、チームのディフェンスの結果です」
この瞬間、20世紀の日本選手権などで新日鉄釜石、神戸製鋼が記録した全国大会連覇記録を、「7」から「8」に塗り替えたのである。
緊迫の場面を振り返る飯野副将の言葉は、栄光の瞬間と地道な努力をイコールで結ぶようだった。
「ボールが落ちた瞬間は、誰か蹴れ! と」
チームはかねて、日本選手権でのTL勢撃破も目標に据える。18日。心待ちにしていた決戦を直前に控え、東京・帝京大百草グラウンドで汗を流していた。飯野は日が暮れると芝を後にし、張りのある声で「やってきたことを出し切るに尽きる」と意気込む。
サントリーでは、LOの真壁伸弥、FLのツイ ヘンドリックといった日本代表経験者、身長が200センチもあるLOのジョー・ウィーラーなど、強力な戦士が揃って先発。こうした選手たちと来年度から定位置を争う飯野は、こう展望していた。
「相手は(接点の球に)絡んでくる。身体、当てていきたいと思います。より速く、強く」
愛知・三好高出身。大きな声と運動量で、1年時からチームを鼓舞。3年になれば不動のダイナモとして、強烈なタックルを幾度もかましていた。今季は試合や練習後のクールダウン時、皆で円を作って1つひとつのストレッチを丹念におこなわせていた。「はーい、ハム(ストリングスを)伸ばそうー!」。前年度までスクラムコーチを務めたOBの相馬朋和(現パナソニックヘッドコーチ)は、この青年の明るさとリーダーシップをただただ称賛していたものだ。
「きっと、どこの世界に行っても成功する。組織に1人、彼のような人材は欲しいでしょう」
身長189センチ、体重108キロ。LOとしても存在感を発揮してきたが、大学選手権決勝からはFLに異動。姫野和樹、金嶺志といった同じ4年LOとともに、「痛いプレー(帝京大内での言い回し。タックルや肉弾戦などで身体を張るさまを指す)」に力を込める。
(文:向 風見也)