東日本の地域リーグであるトップイーストDiv.1で前年度まで9、7、4、4位と成長を示していた日野自動車は、今季、2位にジャンプアップ。現在は国内最高峰トップリーグ入りをかけたトップチャレンジ1に参戦中だ。
「伸びしろしかない」
常にこう先を見据えるのは、今年度サントリーから移籍加入した佐々木隆道。1月15日には大阪・東大阪市花園ラグビー場で、トップキュウシュウAで1位だった九州電力と同最終戦をおこなう。
さかのぼって9日、福岡・レベルファイブスタジアム。トップイーストDiv.1首位の三菱重工相模原との2戦目を7−29で落とした。序盤を0−5と防御で応戦も、好機でミスを連発。試合中盤以降の我慢比べで苦しみ、ノーサイド直前まで無得点に終わった。
33歳のFL、佐々木が振り返る。
「やっぱり、アタックの時のハンドリングエラーやパスミスは、(当事者以外は)コントロールできない。食らいついていきたいと思ってはいましたけど…」
9日の試合では、プロ入り後初めてというLOでのプレーを経験。スクラムの中核での押し込みなどに難儀し、「しんどかったです。押す重要度が違いますよね。僕がちゃんとできていれば…」と苦笑していた。もっともチームには、確かな手ごたえを感じてもいた。
というのも、前年11月19日にあったトップイーストDiv.1の直接対戦時は、相手の海外出身選手の圧力に気圧され0−34で屈していた(神奈川・相模原ギオンスタジアム)。また、年が明けて1月3日にあったトップチャレンジ1の初戦(東京・秩父宮ラグビー場)では、トップウェストAでトップだったNTTドコモに12−68で屈している。
この2つの試合時と比べれば、日野自動車はコンタクトシーンでの激しさや鋭さを高めていたのだ。佐々木は言った。
「ディフェンスで戦えるようになったのは、大きい。自分たちが仕掛けながらディフェンスをしよう…。そこの部分は、よかったと思います」
トップリーグの他チームからの移籍を推進する日野自動車にあって、生え抜き2年目のLO、庄司壽之は、佐々木加入による効果をこう語る。
「1つひとつの練習をまじめにやるのは当たり前で、『勝つためにどうすれば…』という面のことを細かく問いかけながらやられている。何より佐々木さん自身が真摯に取り組んでいるので、誰も文句は言えません。僕自身だけの話で言えば、シーズン前の体重は95キロでいまは99キロ。それで、(動き回るなかで)重さは感じない。それこそ、隆道さんが空いている時間にトレーニングをされているのを見て、自分ももっとやらなければだめだと思ってやり始めたら…それが少しずつ結果につながってきました」
若手選手へ行動の規範を示し、首脳陣の意志を尊重しつつも練習内容のブラッシュアップを提案する…。サントリーでのトップリーグ制覇や日本代表入りの経験もある佐々木は、グラウンド内外でハードワーク。かくして、日野自動車の進化を促している。
目の前の九州電力戦、28日に予定されるトップリーグ下位チームとの入替戦(対戦カード・場所未定)、さらにその先に向け、どんなレベルアップが必要になるのだろうか。佐々木は考えを明かす。
「フィジカルで戦えるようになったことは継続する。アタックして取り切るところを、示したいです。沢木さん風に言うと、アンダープレッシャー(相手が強いプレッシャーをかけるなか)でのプレーの精度を…」
くしくも古巣のサントリーは、沢木敬介新監督のもと今季トップリーグ制覇を果たしている。佐々木の言う「沢木さん風に…」は、わが故郷へのリスペクトの証とも言えよう。ただ、移籍時にはこうも言っている。
「サントリーから来た佐々木だ! と入ってしまうと、よくない。僕よりも周りの選手の方が、日野自動車のラグビーのことを理解しています。しっかり、学んでいきたい」
己の立場を踏まえながら、「人を動かすことは、大変です」と再確認しながら、いまいる組織を発展させる。
(文:向 風見也)