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NTTコム・金正奎が話す、離脱&復帰&日本代表&サンウルブズのこと。

2017.01.14

NTTコミュニケーションズ主将の金正奎。今季TL最終のクボタ戦は先発出場(撮影:松本かおり)

 負けたら悔しい。試合の詳細を振り返る前に、まずその感情が口をつく。それは、アスリートにとって自然な流れかもしれない。
 NTTコムの金正奎も然りだった。入社3年目の主将は、公式会見に出席。第一声をこう発した。
「本当に負けて悔しい。それが、本音です。ゲームを上手く運べなかった、相手に上手く運ばせてしまった。そこに敗因があると思います」
 2017年1月8日、東京・秩父宮ラグビー場。日本最高峰であるラグビートップリーグの第14節に挑むも、15−26で敗れていた。
 陣地を問わず左右に展開するNTTコムは、この日、悪天候下で落球を重ねた。対するキヤノンのセットプレーにも手を焼き、後半26分には自陣ゴール前での相手ボールスクラムに3度続けて反則を誘発された。
 質疑応答のなか、背番号7はこう言葉をつないでいた。
「自分たちのセットプレーにも準備してきたものがあったんですけど、キヤノンさんのセットプレーのパフォーマンスが良かったのではないか。それがグラウンドに現れたと思います」
 グラウンド内でもシンプルな声掛けを意識している金は、今季、試練を乗り越えてプレーを続けている。
 5月に日本代表デビューを飾り、6月の対スコットランド代表2連戦にも先発した。両軍が登録したFWの選手にあって最も小さい身長177センチ、体重93キロというサイズながらも、密集戦の球に絡みつくなど持ち味を発揮。その流れで、日本のサンウルブズにも追加招集された。国際リーグのスーパーラグビーに参加できたのだ。
 好事魔多し、である。そのスーパーラグビーのゲーム中に、左ひざを故障。入院と手術を余儀なくされる。国内所属先でのNTTコムでは、今年度から主将を任されていた。しかし、8月のトップリーグ開幕時はスタンドでの観戦が続いた。
 復帰したのは、12月3日の第10節(大阪・東大阪市花園ラグビー場)。すでに、シーズン終盤に突入していた。サントリーとの試合を5−29で落とした時点で、通算戦績を6勝4敗とした。
 いったい、そこまでどんな心境で日々を過ごしていたのだろうか。また、戦列に戻った際はどんな思いでチームを観ていたのか。
 キヤノン戦後の金は、正直かつポジティブな見解を口にした。
「怪我の期間はやきもきしながらも、チームメイトを信頼してやっていた部分はあった。主将を代行してくれた須藤(拓輝/HO)、鶴田(諒/WTB)さんにはすごく感謝しています。それに僕が帰ってきてからも、皆が変わらずにリーダーシップを取ってくれる。やりやすいです」
 負けたら悔しいのと同じように、怪我でプレーできないのは辛い。それでも、自分がいないなかでチームをリードする味方がいたことには手ごたえを感じたというのだ。
 1人の船頭役に依存せず、芝に立ったほぼ全員の選手が勝利に向けた発言を重ねている…。前年度8位で今季は現在5位のチームには、そんな主体性が育っているのだと金は強調する。
「自分が何かを言わなくても、誰かが発言をしたり、行動に示したりする。それは、去年までとの大きな違いだと思います」
 ここから期待されるのは、代表復帰だろう。昨年11月は、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いるジャパンの遠征をテレビなどでチェック。初戦の約1週間前から始動したというチーム状況を踏まえ、「少ない準備期間で高いパフォーマンスをされている」と感じた。
 自身がプレーするFLでは、同じ早大出身で現パナソニックの布巻峻介が出番を得ていた。それを観た金は、こんな思いも抱いたと笑う。
「布巻は大学時代からライバルでもある。高め合いながらやっていけたら、と思います」
 ナショナルチームとリンクするサンウルブズも、2月から発足2季目をスタートさせる。現在はスコッドに入っていない金は今後の招集の可能性について「ノーコメントとさせてください」とするが、国際舞台に挑む意志は強い。
「(現代表などから)新たな刺激ももらえている。負けてられないな、という感じもします」
 明るい人柄でファンからの支持率も高い「ショーケー」は、まず、14日、秩父宮でクボタとのトップリーグ最終節に臨む。
(文:向 風見也)
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