ラグビーリパブリック

ここで成長しなければ、ただ試合に出られないのと同じ。李聖彰の覚悟。

2017.01.13
刺激のある環境に明るい表情の李聖彰。(撮影/松本かおり)
 晴れ渡った青空の下で額に汗。気持ちよさそうだった。
 1月13日、午前。李聖彰は千葉県成田市の中台運動公園にいた。HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2016-2017のニュージーランド大会へ向けて準備を進める男子セブンズ日本代表候補の合宿に参加していた。明るい表情だった。
 帝京大で副将を務め、東芝ブレイブルーパスに入って3年目。パワーあるボールキャリアーとして期待される男は、しかしながら、入団以来あまり出番に恵まれていない。公式戦は1年目のプレーオフトーナメント準決勝のパナソニック戦に途中出場を果たしただけ。じれったいシーズンを送っている。
 この合宿で表情が明るいのは期待をかけて招集されたからだ。候補合宿とはいえ、代表と名のつくものに近づいたのだから胸が高鳴る。「セブンズはジャパンセブンズで少しやったことがある程度」と言うけれど思いは強い。「絶対に成長して帰る」覚悟だ。
 笑顔の裏には逡巡もあった。自チームはまだトップリーグを戦っている。そんな中で仲間のもとを離れるのだ。悔しい。俺はブレイブルーパスで試合に出たい。最終戦までポジションを争いたい。悩んだが、冨岡鉄平ヘッドコーチとも話し、セブンズでの経験を今後のプラスに転化させる道を選んだ。
 東芝のバックローにはいま、イキのいい若手が何人もいる。2年目の徳永祥尭(リオ五輪セブンズ日本代表)と山本浩輝(2016年春の日本代表)、そして昨秋のアルゼンチン戦・欧州遠征時にジャパンに選ばれた1年目のマルジーン・イラウア。後輩たちの躍進は頼もしいけれど、李の胸中が穏やかなはずがない。大学王者の中心選手だったプライドも自信もあるが、しがみついてでも浮上のきっかけをつかみたい。
「(後輩たちは)みんな流れを変えられるプレーができる人たちばかりです。自分もそういうプレーをしなければいけないし、自分の持ち味であるアタックの力をもっと伸ばしたい。どうアピールし、首脳陣に印象付けていくかが大事。ここ(セブンズ合宿)にいるのは(東芝のバックローの中で)自分だけですから、それを前向きに考え、絶対に成長して戻りたい。そうでないと、チームにいて試合に出られないのと変わりありませんから」
 東芝には、30歳のときに初めて日本代表に選ばれた望月雄太など、時間をかけて大きく伸びた先輩がいる。そういう存在が李の心を支えている。
 額に浮かぶ汗はそのまま、笑顔で言った。
「セブンズは組織で戦う15人とは違いますね。もちろんセブンズも組織は大事ですが、もっと個人の技術や責任が求められるし、プレー数も多い。プレーも休むことなく連続させなければいけません。これまでにない刺激を受けています」
 未知の世界の空気を吸って気分は変わりつつある。それを周囲にも分かるようなプレーの変貌につなげ、府中のファンを熱狂させるパフォーマンスを見せたい。
 
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