ラグビーリパブリック

憧れと誇りを抱いた80分間。東海大の明るい希望たち。

2017.01.11

大学選手権決勝後、挨拶する東海大メンバーへ拍手を送る東海大相模の選手たち(撮影:多羅正崇)

 後輩であることの喜びが込み上げた。
「自分たちの先輩方なので、誇りに思います」
 東海大学付属相模高校(神奈川)のPR土一海人(どいち・かいと)主将は、そう言って目を輝かせた。
 1月9日、秩父宮ラグビー場でおこなわれた第53回全国大学選手権決勝は、大熱戦の末に帝京大学が33−26で東海大学を下し、前人未到のV8を成し遂げた。その試合後、声援の余韻が残るバックスタンドに、整然として拍手を送る東海大相模ラグビー部の姿があった。
 4日前にチーム史上初の快挙を成し遂げたばかりだった。1月1日から5日にかけて福岡県宗像市のグローバルアリーナで開催された「サニックス ワールドラグビーユース交流大会 2017」の予選会の決勝で、伏見工業・京都工学院高(京都)を27−12で下して優勝。本大会への初切符を手にした。
 予選会の準決勝では、國學院久我山(東京)を43−5で下すなど、全国的な有名校を次々と撃破。東海大相模の三木雄介監督は予選会を振り返って、「久我山さん、伏見工業さんもそうですけど、名前のある学校にどれだけチャレンジできるかがターゲットになっていました」とチャレンジャー精神を明かした。
 三木監督は東海大仰星(大阪)出身で、東海大では1999年度の主将を務めた。またこの日は、東海大の試合登録メンバー23人中7人が東海大仰星出身。高校・大学の後輩たちの熱闘を目の当たりにした三木監督だが、試合の感想を求めれば「ラグビー偏差値の高いゲームを見られたことが、子どもたちにとってプラスだったと思います」と、まず教え子たちへの想いが口を突く。
 東海大相模は1964年、東海大の付属校として初めてラグビー部を立ち上げた歴史を持つ。
 2015年度の神奈川県の花園予選決勝では、桐蔭学園に敗れて一度は涙をのんだものの、記念大会枠4校の1校に選ばれて第95回大会に出場。25年ぶり8回目となった大舞台では、1回戦で光泉(滋賀)に10−13で惜敗。翌年、2016年度の花園予選では準決勝で慶應義塾に17−28で競り負けはしたが、着実に強化は進み、2017年新春に大きな花を咲かせた。強い付属校は、東海大の明るい希望だ。
 もちろん、道は半ばだ。
 東海大相模中等部からフロントローひと筋のPR土一主将は、「花園予選で、桐蔭さん、慶應さんに勝てるように頑張ります」と、強豪ひしめく神奈川県下を戦い抜く覚悟を示す。この日、東海大の強力スクラムがもたらした2本のトライについては「堪りませんでした」と大きな笑顔。
 そんな頼もしい教え子への三木監督の期待値は高く、「今年のチームはバランスが良くて、能力の高い子たちがいるので、その子たちが思い切ってプレーしてくれればと思っています」。
 2017年4月28日から5月5日に開催予定のサニックスワールドユース本大会まで、時間はある。まずは神奈川県下の新人戦で腕試しをするつもりだ。
 表彰式も終わって、人の掃けたバックスタンド。
 東海大相模の選手たちがいっせいに散らばり、通路や座席下のゴミを拾っていた。
 先輩たち同様、凛々しい後ろ姿を残して東の聖地を後にした。
(文:多羅正崇)

大学選手権の表彰式後、バックスタンドのゴミを拾う東海大相模の選手たち(撮影:多羅正崇)
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