ラインアウトのボールを奪い合い神戸製鋼(青)とクボタ(オレンジ)。
ホームチームは大阪に本社のあるクボタのため、
神戸製鋼はセカンドジャージーを着用
1月8日、関西の2つのトップリーグチームがホーム扱いの大阪長居・金鳥スタジアムで痛恨の黒星を喫した。
神戸製鋼コベルコスティーラーズはクボタスピアーズに16−23、近鉄ライナーズはヤマハ発動機ジュビロに12−26で敗れた。
正午の気温は6度。天気は雨。時折みぞれが混じる寒さの中、闘志は消え入った。
神戸製鋼はリーグ戦3位までに与えられる第54回日本選手権の出場権を逃す。
7点差以内の敗戦で、勝ち点1を上乗せして48とした神戸製鋼だが、3位・パナソニックワイルドナイツとの差は9に広がった。この結果、最終節にボーナスポイントを含む勝ち点5を挙げても、パナソニックを上回れない。前年度と同じ4位が決定した。
近鉄は再昇格が決定した2008年度以来9シーズンぶりに入替戦出場が決まる。
勝ち点を挙げられなかった近鉄は順位を1つ下げ15位となった。最終節にボーナスポイントを含む勝ち点5を挙げ、19としても、入替戦回避となる12位・宗像サニックスブルースの25点を超えられないためだ。
なお自動降格となる16位は勝ち点6のHondaヒートに決定した。
神戸製鋼に衝撃が走ったのは、7−0の前半14分だった。LO中島ヴァカウタイシレリがタックルの標的になったLO金昊範(きむ・ほぼむ)を抱え上げて投げた。金は頭から落ちる。梶原晃久レフェリーはレッドカードを示し、中島は一発退場になった。
以後、神戸製鋼は前後半合わせて66分間を14人で戦わざるを得なくなった。
記者席からは「流れの中で故意ではなくああなってしまった」と同情論も飛び出した。しかし、神戸製鋼関係者はかばわない。
「あれは必要ないプレー。スピアータックル(Spear Tackle)は現在の世界的な流れからすればレッドカードの対象。中島はまじめな選手だけれど、退場にされても仕方がない」
前半はコンタクト能力に秀でた中島をクボタFWにぶつけ、疲れを誘う。後半はFW第三列のリザーブながら、208センチと高さとうまさのあるLOアンドリュース・ベッカーを投入するベンチの思惑も消える。
日本代表キャップ7を持つSO山中亮平は思い返す。
「あの退場はきつかった。あれで戦い方を変えざるを得なくなった。自陣からでも回せるところは回していくつもりだった。でも1人少なくなり、それができなくなった。キックで敵陣に入り、ペナルティーをもらったらゴールキックを狙う形になってしまった」
言葉通り、前半29分、36分と山中はPGを決め、前半は13−8で終了する。
後半19分にはキックチャージを起点にクボタFB合谷和弘にトライを許し、13−18で逆転を許す。同24分には山中がこの日3本目のPGを成功させ、16−18と追いすがる。しかし、後半37分、合谷のライン裏へのチップキックをFB近藤英人にインゴールで押さえられ、試合は決した。
ジム・マッケイヘッドコーチは低い声で試合の総括をする。
「色々な要素が絡み合った結果。ウチはまだコンスタントにいいプレーができない」
日本代表キャップ39のCTB今村雄太は10年目を迎えた。10勝4敗とクボタ、パナソニック、ヤマハ、NECグリーンロケッツに負けた理由を答える。
「アタックもディフェンスもウチは自信を持ってやっている。でもそれが出せる時と出せない時がある」
指揮官の見立てと一致した。
今季最終戦は1月14日。ホームのノエビアスタジアム神戸で1位のサントリーサンゴリアスと対戦する。マッケイヘッドコーチさえない顔色で言った。
「私たちには失うものがない。その強みを生かしたい」
近鉄は前半、CTB野口大輔が3PGを決め、9−7とリードを奪った。しかし、後半9分、モールを押し込まれてトライを奪われる。12−14の同31分にはモールコラプシングを認定トライとされ、突き放された。坪井章監督は記者会見で声を震わせた。
「悔しい。今日の負けは本当に悔しい」
ヤマハの得意とするスクラムでは、近鉄が押し込みコラプシングを奪う場面も見られただけに、無念さが漂った。
この日も5人いる外国籍選手で出場したのはLOマイケル・ストーバークのみ。オーストラリア代表キャップ23を持つCTBアンソニー・ファインガら4人のケガは癒えない。
「野球で例えるなら、三、四番がいない状態で一、二番がつないでも…」
坪井監督は視線を伏せる。
1月14日のリーグ最終戦は14位の豊田織機シャトルズと対戦する。勝てば13位の可能性があり、入替戦でも一番格下と対戦する。
「絶対勝つ。ノーオプション」
日本代表キャップ63を保持するFLトンプソンルークは短い言葉を残してスタジアムを後にした。
神戸製鋼、近鉄ともに、この土曜日には最後の意地を見せたい。
(文/鎮 勝也)