ラグビーリパブリック

2位進出は逃したけれど…。戦力整った大東大、大学選手権へ勝負の季節へ。

2016.12.01

中央大戦で3トライを挙げた大東文化大のWTBホセア・サウマキ(撮影:長岡洋幸)

 11月27日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学ラグビーリーグ戦1部の最終週の試合があり、前年度大学選手権4強の大東大が登場した。
 ここ3季勝てなかった中大を相手に、攻守で持ち味を発揮する。64−21と大勝した。青柳勝彦体制下では4シーズン目にして、初の中大戦勝利。最上級生を中心に、喜びの声を重ねた。例えば、1年時からレギュラーの小山大輝はこうだ。
「1年の時から勝てていない気持ちをぶつける、と。特に後半からは、ディフェンスで攻められたかな、と」
 リーグ戦の通算成績を、6勝1敗とした。青柳監督にとって最高位となる、2位でシーズンを終えそうだった。それだけに大東大対中大戦後の公式会見では、大東大が2位となった場合を想定した質問が飛んだ。
 結局は、3位となった。
 直後におこなわれた第2試合で、大東大に屈して1敗の流経大が全勝だった東海大を29−26で制したからだ。流経大が東海大を破って、上位が三つ巴となり、規定上、当該校同士の得失点差は大東大が最も低かった。
 それでもSOの川向瑛主将は、こう笑う。
「アタックは自信を持っていたので、ディフェンスでどれだけ身体を張り続けられるかを意識していました。いままでの中大戦であったのは、中盤で反則をして自陣でモールを組まれて…という(悪い)パターンだった。きょうはそのパターンがあるとイメージして、ノーペナルティで、ディフェンスで前に出続けることを意識しました」
 前半18、26分の失点はそのモールがきっかけではあった。ただ、その事態の発生を最小限に抑えられたのも確かだった。リーダーは手ごたえをつかんだ。
「接点で余計なことをするな、と、外に立つ余裕のある選手が声を出し続けた。それにFWが応えてくれた」
 前年度以上の成績を目指す選手権へは、11日の3回戦(会場は秩父宮ラグビー場)から登場する。ノーサイド直前まで鋭いタックルで守備網を引き締めた1年生LOの服部鋼亮が「自分的には何もできなかった。もっとタックルしたかった」と言うチームにあって、この攻撃のキーマンは何を思うか。
「きょうは、皆、1人ひとりがベストを出した。僕も、去年は中大の試合で怪我もしたから、今年はリベンジしたかった。できるだけトライを取りたかった。自分のベストを出したかった」
 随分と上手くなった日本語で振り返るのは、4年生WTBのホセア・サウマキだ。
 前半8分、自陣10メートルエリア左でパスを受け取ると、大外へスワーブを切りながらぐいぐいと前進。敵陣でカバーに回ったタックルも勢いで抜き去り、ゴール前ではさらなる防御を抱え込んでオフロードパスを放つ。間近へサポートについたFL河野良太に、先制トライを決めさせた。
「あれが、俺の一番好きな走り方。スペースがあれば、ブラインドサイド(狭いエリア)を結構、イケる!」
 その後もこの人の劇場は続く。2点差を追う29分には、自陣22メートル線付近から大きくゲイン。やがて前方に蹴り出した球を自ら追いかけ、捕球した。勝ち越しトライを挙げ、17−14とした。
「いろんなスタイルのプレーを出せました。アマトとタラウ(ファカタヴァ兄弟)も(怪我から)帰ってきて、きょうは大東大にとってベストのメンバーでした。いい球をもらえました」
 さらに33、39分と続けてフィニッシュを決め、後半32分にお役御免となった。シーズンを通しては、徹底マークにさらされながらも全7試合でインゴールを割った。リーグ戦のトライ王となった。
「シーズンの始まる前、今年は絶対にトライキングを、と考えていました」
 7人制トンガ代表の選出経験があるが、15人制のジャパンを目指している。国籍取得や7人制日本代表としてのセブンズワールドシリーズ出場など、諸条件のクリアへも積極的な意志を示している。
 新しい世界を切り開く前に、まず、小山や川向らとのラストシーズンへ熱を込める。
(文:向 風見也)
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