決勝戦後、優勝の記念撮影をする関西学院上ヶ原
大学クラブチームの関西ナンバー1を決める第26回関西学生クラブ選手権決勝が11月27日、神戸市の神戸製鋼灘浜グラウンドあり、関西学院上ヶ原が同志社H&Tを12−3(前半5−0)で破り、2年連続7回目の優勝を果たしました。
大粒の雨。緑色の人工芝には白く水が浮く中、試合は40分ハーフで行われました。
前半17分、ディフェンスラインのギャップを突いて、上ヶ原が先制トライ(ゴール失敗)。後半20分、H&TはSO西山浩輝君がPGを決め、2点差に追い上げます。上ヶ原はゲームキャプテンをつとめたLO山本廉君のタテ突破を起点に同33分、HO西村卓也君がポール下に飛び込み、白熱した試合の行方を決定させました。
自分が関係するスクラムは押されただけに、山本君は満面の笑みとはいきません。
「厳しい試合だったので、まだ勝った実感はわきません。でも、トライを獲り切ることができたのはよかったです」
勝った上ヶ原、負けたH&Tともに関西学生クラブの名門です。創部は1969年と1963年。H&Tの方が6年早くできました。
「上ヶ原」は大学のある一帯の地名。ジャージーは白に濃紺の太い段柄です。一方の「H&T」は「Hare and Tortoise」(ヘア・アンド・トータス)の略で、和訳すると「うさぎとカメ」になります。ジャージーは体育会の紺グレの紺をエンジに変えたもの。この色合わせの段柄も目に鮮やかに映ります。創部時には体育会の中興の祖である元監督の岡仁詩さん(故人)にあいさつに行った、という逸話が残ります。創部54年の歴史の長さや律義さを物語るエピソードです。
2クラブともに大学公認団体。他大学からの入部もOKです。全体練習はだいたい週1回、土曜日。部員は残りの日に自主練習をしたり、授業に出たり、バイトをしたり、遊んだりと学生生活をエンジョイします。
上ヶ原主将は商学部3年でFLの大出剛君です。上ヶ原では、4年生になると就活のため、いったん引退するのが慣例です。大出君は、大阪・交野3中時代はラグビー部でしたが、牧野高ではハンドボールに所属。大学入学直後にラグビーを再開した理由を「もう一回やりたくなりました。でも高校ではやっていなかったので」と話します。
この試合は、夏に左ヒザ前十字じん帯を断裂した影響でベンチでの観戦となりました。
H&T主将は経済学部4年で右PRの堀将史君。福岡の高校ラグビー名門、筑紫丘出身です。体育会でのプレーも考えましたが、「浪人したので、難しいと思いました」。決勝戦は最後まで試合に出ました。
上ヶ原、H&Tを含め9チームで関西学生クラブ選手権は争われます。大阪大医歯学部と京都大医学部の医科系2チームは、関西大学リーグではなく、ここに所属しています。この日、阪大からは?本(さかもと)昌弥君(3年)、赤松展人君(1年)ら4人が駐車場案内など運営補助として参加しました。
?本君は所属理由を説明します。
「僕たち医学部は夏に大きな大会があり、そこで引退する人が出てきます。その後にリーグ戦を戦うのはレベルが高いのです」
医学部チームにとって大学選手権にあたるのは8月の西日本医科学生総合体育大会(通称:西医体=にしいたい)です。そこを頂点に据えるため、ラグビーシーズンとなる9月からの試合は戦力ダウンを伴います。そのためクラブ選手権に参加しているのです。
「型にはまらず、オフロードがバンバンできたり、自由にできるので楽しいですよ」
?本君は笑顔を浮かべます。
H&T主将の堀君は地方局のKBS京都に就職が決まっています。上ヶ原主将の大出君はこれから就職活動に入ります。
堀君はクラブの4年間を振り返ります。
「楽しい4年間でした。先輩方にもよくしていただいたし、後輩もできました。人のありがたみがわかりました」
体育会を選ばなかった後悔はありません。
「正直に言えば、1、2年の時は真剣なラグビーを考えた時期もありました。でも、3年で主務になって、いろいろなOBさんとお会いする中で、『この組織はしっかりしている』と確信できました。みなさん素晴らしい方々です。それに、バイトも2つ(テレビ局&花屋)できました。イブ祭(学園祭)でミネストローネを売る模擬店を出せたりもしました。明後日(29日)の学校の創立記念日には、みんなでUSJに遊びに行きます。ここでのラグビーに悔いはありません」
敗者なのに、堀君は終始にこやかでした。
優勝した上ヶ原は、12月25日に行われる第15回東西学生クラブ対抗試合(東京・江戸川陸上競技場)に出場します。学生クラブ日本一をかけて、関東学生クラブ選手権の覇者・明治大学MRCと対戦します。
20年近く学生たちの世話をしている廣島治さん(関西ラグビー協会クラブ委員会学生クラブ担当)は言います。
「彼らにいつも言うのは、『どんなカテゴリーでも日本一は日本一』ということです」
上ヶ原が勝てば第9回大会以来7年ぶり2回目の学生クラブ王者となります。
(文:鎮 勝也)
決勝戦後、写真におさまる両チーム幹部。関西学院上ヶ原のゲームキャプテン・山本廉君、主将の大出剛君、世話役の廣島治さん(関西ラグビー協会クラブ委員会)、同志社H&Tの主将・堀将史君、阿久津奎君(左から)