ラグビーリパブリック

立派な主将たち。明大中野、久我山引き分けるも、27大会ぶりメイナカ花園へ。

2016.11.13

歓喜の明大中野。右から2人目がSH今井快主将。(撮影/松本かおり)

 明大中野・今井快。國學院久我山・北原璃久。ふたりの主将は立派だった。数十秒後、仲間の前でどちらが笑顔になるのかまったく分からなかった。
 19-19。11月13日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた第96回全国高校ラグビー大会の東京都第2地区予選決勝は、明大中野高校と國學院久我山高校が引き分けた。インジャリータイムに入ってから明大中野がPG機を得て、そのキックを決めれば勝利を手にするところまでいったもののCTB亀丸傑の蹴ったボールは左に外れた。そのボールを受けた久我山がアタックを継続。それを止めた明大中野がふたたびPKを得たが攻め切れなかった。
 同点のままフルタイムを迎え、花園行きの切符を手にできるか否かは抽選に委ねられた。
 試合後、監督とともにふたりが部屋に入った。数分後、部屋からふたりは仲間のもとへ。そのとき流れた場内アナウンスを聞いた紫紺と白の段柄ジャージーは歓喜の声をあげ、試合後のクールダウンで体を動かしていた久我山の選手たちは静かにピッチを去った。
 どちらがクジを先に引くかを決める予備抽選をあとに引き、結局本抽選でも残りクジを引くことになった今井主将は、残りものに福があった喜びを心の奥深くにしまい込んで久我山の北原主将と言葉を交わした。
「(抽選後)握手をしたときに、『頑張ってください』と伝えられました。『久我山の分まで頑張ってきます』と答えました」
 明大中野の27大会ぶり、3回目の全国大会出場は、静かな部屋の中で決まった。
 ともに3トライ。先制したのは久我山だった。前半20分、ラインアウトから攻めてピッチ右サイドに相手を集めておいて左にロングキックパス。WTB安部勇佑がインゴール左隅に押さえた。しかし、26分には明大中野が追いつく。スクラムからNO8加藤諒がサイドを走り、最後はSH今井がトライラインを突破した。
 前半は5-5の同点だった。しかし、試合を通して前に出る意志を強く示していたのは明大中野だったか。
 タックル、タックル、またタックル。そうやって久我山を止め、押し戻した。後半1分には集中力高く、キックオフボールから攻めた。右サイドを崩して前進し、左へ。FB小島昂が思い切り良く走って勝ち越しトライを決めた。13分に追いつかれても21分にSO中村勇太がインゴールに飛び込み、26分にまた同点になっても、前に出る動きと気持ちは失わなかった。
「ここまで厳しい戦いを続けてきたことが、この試合で活きた(準々決勝で本郷に24-21、準決勝で目黒学院に19-12)。これまでのメイナカは気持ちが表に出ないチームでしたが、フィジカルの強い相手と戦うことで前に出る気持ちも出てきたし、今日はいつも以上にみんな激しくタックルできていました」
 今井主将は、仲間のことを誇らしそうに話した。
 試合には負けなかったけれど、抽選で当たりクジを引けなかったことに久我山の北原主将は責任を感じて「チームメートや試合に出られなかったメンバー、監督やスタッフの方々、応援してくれた人たちに本当に申し訳ない」と涙ぐんだ。
「何にもできない自分を同期の仲間はいつも支え続けてくれました。みんなでチームを引っ張ってくれた。きょうは、自分たちのやってきたことを出せなかったのが残念です。アタックもディフェンスも、メイナカの方が立ってプレーしていた。1、2年生には、来年勝ってほしい」
 ただ、最後まで負けなかったのだから月曜日には仲間と胸を張って学校に戻りたいと話した。卒業後はニュージーランドへの留学を考えている。日本代表になる夢を胸に、ラグビーの人生は続く。
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