2016年度トップリーグ(TL)で4位につける神戸製鋼コベルコスティーラーズ。
今季、韓国から新加入したLO張碩煥(チャン・ソクファン)が好調だ。韓国軍体育部隊(尚武)で2年間の兵役を終えて日本にやって来た。2015年の韓国代表(4キャップ)。194センチ、110キロの体格を有するも7人制代表としても国際大会の経験を持つ。ランニング能力もあり複数のTLチームが獲得に動いていた人材だ。
張はすでにレギュラーのポジションを獲得した。TL開幕戦(8月27日、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦)に4番で先発出場し、後半39分までピッチに立った。5番は南アフリカ代表のアンドリース・ベッカーだった。第2節も4番で出場。第3節と4節はリザーブで後半から。第5節以降は5番を背負い先発した。9試合を終えて7試合に先発し計537分間、グラウンドで奮闘した(1試合平均1時間)。そして8節のホンダヒート戦は、前半11分に先制トライを決めた(通算2トライ)。もうしっかりと神戸FWの顔となりつつある。
第9節、神戸製鋼はNECグリーンロケッツと秩父宮ラグビー場で対戦し、NECの粘りにあい24−38で2敗目を喫した。張はタックル、ボールキャリーに勤しんでいた。試合後、話を聞いた。
―きょうの試合はどうでしたか?
「自分としてはタックルでミスが多かったと思います。修正したい」
―TL全試合に出場しています。どういう気持ちで臨んでいますか?
「まだまだ足りないことがたくさんあるので成長したい」
―不足していることは何ですか?
「アタック、特にボールキャリーの部分です」
―チームから求められていることは?
「ブレイクダウンでのボールの奪い合いをしっかりやること。神戸に来て教えてもらいました」
張は1991年11月生まれ。韓国中部の忠北高校でラグビーを始めた。高校3年生の時には「春季リーグ戦」「文化観光部長官旗大会」、そして最高の栄誉となる「全国体育大会」の国内3冠を達成した。大学は名門・延世大学へ。卒業後は、尚武へ進んだ。
―日本に来て一番、困ったことは何ですか?
「コミュニケーションです。言葉が話せなかった。いまは日本語、英語でメンバーとコミュニケーションを取れるようになりました」
―日本のラグビー環境は、韓国と違うことを感じますか?
「環境は素晴らしい。選手がラグビーに取り組むメンタルが違います。日本の方が高い気持ちがある」
張を言葉の面からサポートする選手が神戸にはいる。SH梁正秋だ。大阪朝鮮高校出身。秩父宮の試合前アップでも韓国語で張にチームの考えを説明していた。梁は張を「本当に体が強い。プレーもいい」と評価する。
韓国は11月に代表がチリへ遠征し、2試合(11月12日、19日)テストマッチをおこなう。そのメンバーに張の名前は無かった。
―代表に呼ばれましたか?
「話は来ました。しかし前から右足の調子がよくないこともあったので辞退しました」
代表では良きライバルとなるチームメートの日本代表HO木津武士は「伸びしろが大きい選手。期待大です。代表でも戦いたい」と期待する。
11月はじっくりと調整し、韓国では経験したことがない初めての冬のシーズンを迎える。
(文:見明亨徳)
今季トップリーグ開幕から9試合すべてに出場している神戸製鋼のLO張(撮影:見明亨徳)