<ジャパンラグビートップリーグ 2016−17 第6節>
パナソニック 51−26 NEC
(2016年10月8日/埼玉・熊谷陸上競技場)
マン・オブ・ザマッチは、SO山沢拓也だった。
筑波大4年にして国内トップのステージに立つ司令塔は、4戦ぶりに先発復帰するや、多彩なキックを織り交ぜゲームを動かす。
前半10分には、持ち前の走りでも魅せる。敵陣の深い位置で球をもらうや、瞬時に守備網を蹴破った。
そのままトップリーグ初トライなどで、7−5と勝ち越す。
「いい経験をさせてもらっている。その経験を上乗せして、いい選手になりたいです」
かく語る本人を、日本代表のSH田中史朗はこう認める。
「能力が高いのは間違いない」
現在3連覇中のパナソニックは、組織的な反応速度で勝った。
10−5として迎えた前半27分、自陣深い位置でNECのラインアウトから自軍ボールを得るや、右端に立つFL布巻峻介が相手の背後へロングキック。その弾道を織ったのが、足の速いWTB北川智規ゲーム主将だった。慌てて背走した相手は、たまらずタッチラインの外へボールを蹴り出すほかない。
パナソニックは自軍ボールのラインアウトから、LO谷田部洸太郎らの追加点をもたらす。17−5。
NECとしては、瞬く間に好機が失点に変わった瞬間だったか。
前年度は降格争い、いまはピーター・ラッセル ヘッドコーチのもと意思統一がなされてきたチームにあって、SH茂野海人はこう悔やんだ。
「ディフェンスへの切り替え、1人ひとりの意識は改善点です」
以後も加点して4勝目を挙げたパナソニックだったが、終ってみれば反省が口をつく。WTB北川ゲーム主将が悔やむのは、サインプレーによるWTB藤田慶和のトライなどで44−19とした直後のことだ。
NECがキックオフで短い弾道をを放ち、そのまま確保。パナソニックは防戦一方となり、最後はCTBジョーダン・ペインにタックルを外された。後半39分、44−26。
終盤から出てきた若手へもっと注意を促すべきだった…。WTB北川ゲーム主将は、そう振り返った。
「キックオフ。ここからだ。そうは言ったんですけど…。こういうことは、わかっている選手がもっと声を張らないと」
チームにとっての凡事徹底ができたため、パナソニックは試合を支配できた。しかし、最後の最後にその凡事徹底を乱したため、3トライ差以上をつけてもらえるボーナスポイントを獲得できなかった。
ロビー・ディーンズ監督も、穏やかな口調にきちんと棘をまぶす。
「ボーナスポイントという概念が邪魔をした。トライの後に、まずボールを再獲得しないといけなかった」
そんななか、山沢と並ぶ殊勲者はCTBリチャード・バックマンか。
試合序盤にグラウンド中盤左で守備ラインを大きく破られた折、相手のランナーを仕留める。球を手離さない「ノット・リリース・ザ・ボール」の反則を誘った。攻めてもグラウンド外側から中央へ、価値ある杭を打ち続けた。
こちらは最後まで凡事徹底。
(文:向 風見也)