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ラグビーワールドカップ2023招致レース 3か国の先頭争いは…

2016.10.06
2023年W杯開催を目指し結束するアイルランドは招致レースの本命か(Photo: Getty Images)
 日本で楕円球の祭典が開かれるのは2019年だが、その4年後のラグビーワールドカップ開催をめぐる争いも熱を帯びてきた。南アフリカ、アイルランド、フランスが2023年大会のホストに立候補し、国際統括団体のワールドラグビーは10月4日、開催国候補としてこの3か国を承認したと発表した。
 当初はアメリカも関心を示していたが、招致レースには参加しなかった。同じく、将来のラグビーワールドカップ開催を目指すアルゼンチンは2027年大会をターゲットにした。
 そして、正式立候補していたイタリアが今年9月28日に撤退を発表。
 イタリアのラグビーワールドカップ招致活動は2024年の夏季オリンピック・ローマ招致と密接に関連してW開催を目指していたのだが、ローマの新しい顔となったヴィルジニア・ラッジ市長が財政難を理由にオリンピック招致から撤退を表明。スタジアム整備など計画の実現が難しくなったイタリアラグビー協会は同国政府やオリンピック委員会と話し合い、「悲しいが、もう前には進めない」と断念せざるを得なくなった。
 レースは3か国にしぼられた。スポーツブックメーカーのオッズを見れば、一番人気はアイルランドだ。南アフリカがそれに続き、フランスが3番手となっている。
 フランスはいまから9年前、2007年に開催したばかりで、2度目のホストになるにはスパンが短すぎるかもしれない。
 南アフリカは、あのネルソン・マンデラ大統領も興奮してレインボーネーション(肌の色が異なる人々が共存する虹色の国)に歓喜をもたらした歴史的な1995年大会以来の開催を目指し、当初から有力候補とみられていた。
 しかし、人種問題に関するラグビー協会の取り組みは不十分と政府に評価され、暗雲が漂ってきている。
 南アは、人口の約9割を黒人(カラードなどを含む)が占めており、政府はナショナルチームに黒人選手が少ない現状を納得していない。そして、黒人選手に対して十分な機会を作ることができていないという理由で、スポーツ大臣(フィキレ・ムバルラ)は今年4月、同国のラグビー、クリケット、陸上、ネットボール団体に対して、国際的なメジャー大会の開催招致を禁止したのだ。スーパーラグビー、テストマッチ、ザ・ラグビーチャンピオンシップ、ワールドセブンズシリーズのケープタウン大会は対象外だが、ワールドカップ開催を目指す南アラグビー協会は焦った。ユリー・ルーCEOはすぐにムバルラ スポーツ大臣と会談し、2016年、2017年の努力の結果が再検証されるときまでに、目標に達するよう全力で取り組むことを約束して立候補した。
 南アラグビー協会は2019年ワールドカップに出場するスプリングボックスの選手構成は、黒人選手が50パーセントとポリシーを決めており、それは確実に遂行されなければならない。南アにとって、人種的なトランスフォーメーションは2023年大会の招致プロセスにおいて最重要課題となる。
 アイルランドは1991年大会と1999年大会で共同開催国となり数試合を担当したが、メインのホスト国になったことは一度もない。同国ラグビー協会はアイルランド政府と北アイルランド自治政府(独立時の経緯により北アイルランドはイギリス領)の正式な支持を早くから取り付けており、“オール・アイルランド”で招致活動をおこなっている。
 ダブリンのアビバスタジアムやリムリックのソーモンドパークといったラグビースタジアムに加え、国民的スポーツであるゲーリックフットボールの聖地・クロークパーク(82,300人収容/ダブリン)も会場として計画に入っており、準備は着々と進行中だ。
 来年夏にはダブリンとベルファストで第8回女子ラグビーワールドカップを開催することになっており、盛り上がりが期待されている。
 招致レースを進む3か国は、今年11月1日までにワールドラグビーが定める開催国の基準を満たさなければならない。
 そして、2017年11月にラグビーワールドカップ2023の開催国が正式発表される。

南アラグビー界に厳しく目を光らせる。手前のメガネをかけたが人物が南アのムバルラ スポーツ大臣
(Photo: Getty Images)

エリスカップの後ろにはパリのエッフェル塔。2023年W杯招致レースで逆転を狙うフランス
(Photo: Getty Images)