ラグビーリパブリック

春はボールを持ちたくなかったけれど。ルーキー松浦康一(NEC)の充実。

2016.09.30

デビュー戦となったNTTコム戦で初トライを決めた松浦康一。(撮影/松本かおり)

 デビュー戦から、3戦続けて試合登録メンバーに名を連ねている。初めてトップリーグの舞台に立ったのは9月9日のNTTコミュニケーションズ戦。前半24分、先発のWTB?平祐輝に代わってピッチに入った。
 NECグリーンロケッツにとっての今季第3戦だったその試合以後、明治大学から今春加わった松浦康一は、スタジアムの芝を毎試合踏んでいる。9月17日の豊田自動織機戦ではチームの今季初勝利に貢献し、10月1日におこなわれるトヨタ自動車戦では22番のジャージーを着る。連勝を狙うチームの力になりたい。
 デビューの瞬間は突然やって来た。先発していた?平が負傷したから、予想していた時間帯より随分はやい出番だった。
「緊張しました。ただ、(試合に)出たら楽しもうと思っていました。(秩父宮のナイターということもあり)気分がよかったですね」
 ピッチに飛び出てから12分後(前半36分)には初トライも挙げた。相手がハンドリングミスしたボールをCTB森田洋介が拾い、全員で攻めた。その仕上げに、インゴールの左中間に飛び込んだのが松浦だった。本人は「ごっつぁんトライ」と笑ったが、忠実に動いたから決められた。
「茂野さん(海人/SH)、田村さん(優/SO)の視野が広いので、その動きや指示に反応できれば、と思いプレーしています」
 デイフェンスで絶対に抜かれぬことで自身の存在価値を示しながら、日本を代表するHB団の描くアタックを具現化する。それらに注力することでチームへの貢献をするつもりだ。
 福岡は北九州、鞘ヶ谷ラグビースクールでラグビーを始め、佐賀工業高校に進学した。代表チームへの選出などない無印。大学時代は「凄いチームメートにくっついてやっていればよかった」と謙遜するも、それだけでは将来苦労するからと自律し、鍛えた。体を張った防御や真面目なサポートプレーは、その意識を持ち続けて伸ばした部分だ。
 入社した直後は学生時代とのギャップに苦しんだ。
 働きながらトレーニングを重ねる生活サイクルに慣れなかった。国内最高レベルの激しさ、コンタクトの強さは想像を超えるものだった。
「春の試合ではまったく通用しなかった。ボールを持ちたくない。そんな気持ちになるほどでした」
 苦笑しながら回想した。
「クボタ戦でした。ボールを持って当たりにいったらFWに5mぐらい押し戻されました」
 周囲と同じトレーニングだけではダメだ。時間をやりくりして体幹を鍛え、練習でのコンタクト練習に積極的に取り組んだ。釜池真道や森田洋介、森田茂希ら同じポジションの先輩たちにつきっきりで教わったことも成長を後押しした。
「(デビュー戦では)積み上げてきたものを全力で出し切ろうと。足も速くありません。だからアグレッシブさだけは失っちゃいけないと思ってプレーした」
 トップリーグと大学ラグビーの違いをこう話す。
「大学のチームはそれぞれにキーマンが何人かいる感じですが、トップリーグはみんながキーマンのように思います」
 一人ひとりが高いレベルで責任を果たし、判断する。そんな局面が連続して成り立っているリーグだから、ひとつのミスが勝負を分ける。公式戦の舞台を見て、実際にその場に立ってみて、そう思う。そんな場所でプレーできる喜びと難しさ。その両方が自身の向上心を刺激している。
 東芝のSO田村煕やリコーのNO8松橋周平など、大学時代の同期が活躍していることも嬉しい。ふたりのように先発の座をつかみたい。
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