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サントリーの松島幸太朗が、パナソニックに勝つまで禁酒していた件&etc

2016.09.29

サントリーの松島幸太朗。写真は9月3日のHonda戦から(撮影:松本かおり)

 ここまで全勝のサントリーにあって、23歳の松島幸太朗は淡々と言った。
「やっぱりパナソニックに勝ったのが自信につながっている。次、キヤノンに勝てればもっと自信がつくと思います」
 日本最高峰のトップリーグで、今季は開幕4連勝中。9月17日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた第4節では、3連覇中のパナソニックを45−15で制した。
 左WTBに入った松島は、対面に男子7人制日本代表の福岡堅樹を迎えていた。守備時は、相手から観て右側のスペースを埋めるように位置取り。福岡の得意な「外(タッチライン際)」での走りを、未然に防いだ。福岡が「内」に向かわざるを得なくなった流れについて、自らこう振り返った。
「外を抜かれるより、内へ走らせた方がトライされる確率は低いと思ったので。タッチラインを味方にしながら内に切らせて…。まぁ、それがWTBの仕事だ、ということなんですが」
 そして約2週間後の10月2日、山梨中銀スタジアムでの第5節に挑む。前年度6位でここまで1勝3敗のキヤノンとぶつかる。
 2010年度から3シーズンで5つの国内タイトルを獲得も昨季は9位に沈んだサントリーにとっては、王者を倒した次の地方開催ゲームはモチベーションの保ち方が難しいのだろうか。
 自分たちの置かれた状況を俯瞰して、松島はこうも言った。
「キヤノンもここまで1勝しかしていなくて、勝ちにこだわってくる。僕らはそれを受けずに、いつも通りのアタッキングラグビーをしたいです。いまのサントリーは、まぁ…完全に安定はしていない。ここまでの試合でも、前半の入りは悪かったりするので。キヤノン戦を通して、チームが変われるか。それは、楽しみです」
 桐蔭学園高を卒業後、南アフリカへ渡った。以来、職業戦士として生き、日本代表の常連にもなった。
 今季も国内シーズン前は、オーストラリアのレベルズに加わり国際リーグのスーパーラグビーに挑戦した。希望ポジションはグラウンド最後尾のFBとする。もっともその場の要望に応じ、身体をぶつけるCTBや大外のWTBにも入る。
 これも、職業倫理の表れだろうか。トップリーグ開幕前からパナソニック戦までの間、実は、禁酒をしていたという。
「それ、誰から聞いたんですか」
 事実確認を求められ、苦笑した。
「パナソニック戦が終わるまでは、1滴も。去年もたくさん飲んでいたわけではないですけど、試合後に少し…ということはありました。ただ、飲んでしまうとリカバリー(筋肉の修復)が遅くなる。やっぱり今年は切り替えて、ちゃんとプロフェッショナル(の気持ち)でやっていこう、と」
 元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ(現イングランド代表ヘッドコーチ)は、しばし「チームソーシャル」を開催。選手とスタッフが集まり、ほほを赤らめていた。酒はアスリートのトレーニングにとっての障害物であると同時に、チーム作りにとっての潤滑油にもなり得る。そのためラグビー界でも不可避な存在と目されていた。
 しかし松島は、「ちゃんとプロフェッショナル」という態度を貫いたのだ。パナソニック戦後に少しだけグラスを傾けたら、また同じ生活サイクルに入った。
「たぶん、シーズンが終わるまでは飲まない感じになると思います」
 試合のなかった先週は、体調や以後の日程を鑑みて身体接触を伴う練習を回避した。「試合で100パーセントの力を出すため」だ。
「抑え目にやらせてもらいました。いまは1年中ラグビーをやっているので、休める時は休む。あとはシーズン中に負った怪我(の状態)とか、自分の身体次第で(トレーニングの量を調節する)」
 人に流されぬ自己管理を貫き、開幕5連勝を目指す。
(文:向 風見也)
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