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春は日本代表の前田土芽、再び爆発するか。筑波大10月からシーズン本格化へ

2016.09.27

慶大戦でプレーする筑波大のCTB前田土芽(撮影:井田新輔)

 今春は若手中心の日本代表や20歳以下日本代表に名を連ねるなどステップアップした前田土芽が、所属する筑波大へ戻ってからは足踏みしていた。
 9月18日、埼玉・熊谷ラグビー場。前年度3位だった関東大学対抗戦Aの2戦目で、同5位の慶大に20−28と敗れた。2年目にして背番号12を任されたCTBの前田は、後半20分に交代していた。密集戦での下働きなどでは光ったが、本来の特徴たるランは影を潜めたか。
「まだまだ、なんです」
 こう語るのは古川拓生監督。周りからいろいろと耳にしているのだろう。「皆さん、土芽に期待をされているんですね」と笑い、こう続けていた。
「逃げなくてもいいんです。もっともっと(ぶつかり合いで身体を)ねじ込んでいく泥臭さを持ってもいいかな、と」
 試合後、当の本人も口を開く。11日には東京・秩父宮ラグビー場で、昨季6位の青山学院大に15−13と勝利もやや手こずっていた。ここ数週間のジレンマを振り返る。
「まだまだ自分の持ち味を出せていない。もっとボールキャリーの回数は増えてもいいのかな、と。チームが流れに乗った時に(スコアを)取り切れていないことで、自分がボールをもらう時の自信を持てていないのかな、と思います」
 身長179センチ、体重87キロ。決して大柄ではなくとも、長崎の海星高時代から「CTBとして日本代表に」と宣言していた。話し相手の誘い水に応じる形だったか、歴代の日本代表が外国出身のCTBを重用する風潮に「おもしろくないですね」と笑みを浮かべたものだ。
 冬の全国大会とは無縁も、日本協会の中竹竜二コーチングディレクターに見込まれ高校日本代表入り。中竹が指揮を執る今春の2つのナショナルチームでも存在感を放ち、目を輝かせていた。
 もっともこの秋は、理由もわからず躊躇(ちゅうちょ)している自分に気づいた。慶大戦の不完全燃焼ぶりを受け、「もっと自分が、自分が、という気持ちを出していかないと」。改めて、他人から見た前田土芽らしさを取り戻そうとしていた。
「(日本代表などで)いい経験をさせてもらった。それを還元させられるよう、どんどん身体を張っていく選手になれたらと思います。積極的にコールをして、ボールをもらう。そこで周りとの連携がうまくいけば、もっと突破もできる。ディフェンスでももっと食らいつく意識で行く。相手との体重差で負けている時も、気持ちと技術で負けないように…」
 日本一を争う大学選手権へ出場するには、対抗戦で4位以内に入るほかない。ボーダーライン上の慶大から星を奪われたいま、一戦必勝を誓うのみだ。本番で力を発揮するために、「普段の生活からチームメイトとしっかりコミュニケーションを取っていきたいです」。10月2日、秩父宮。先のシーズンで4位だった早大とぶつかる。
(文:向 風見也)
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