ラグビーリパブリック

ヤマハは「スクラム、ディフェンス、気持ちの勝利」。パナソニック、初戦黒星

2016.08.27
スクラムで圧倒し、吠えるヤマハ発動機の選手たち(撮影:松本かおり)
<ジャパンラグビー トップリーグ 2016−17 第1節>
パナソニック 21−24 ヤマハ発動機
(2016年8月26日/東京・秩父宮ラグビー場)
 国際経験豊富な面子を揃える3連覇中のパナソニックを、一昨季準優勝も選手層の限られるヤマハが制す。
 34歳の司令塔、SO大田尾竜彦が笑った。
「強み、出たな、と」
 元日本代表PRの長谷川慎FWコーチが仕込んだスクラムは、前半2分頃の1本目からうなりを上げた。
 最後尾両脇のFL陣が最前列にいるPRの尻を中心部へ押し込み、自分たちなりの「真っ直ぐ」を貫く。
「この勝負、勝てた」
 右PR伊藤平一郎、かく述懐する。相手の日本代表の左PR稲垣啓太を塊の外からはじき出すなどし、幾度も反則を誘った。左PR稲垣が「予想を上回っていた」と悔やむ一方、中央のHOから転向して2年目の右PR伊藤は想像する。
「塊。僕たちが真っ直ぐ行き過ぎて、向こうは苦しくなって…」
 
 FL三村勇飛丸主将は、「スクラム、ディフェンス、気持ちの勝利」。就任6年目の清宮克幸監督が唱える戦法、そのままの談話である。
 7点リードで迎えた前半24分。
 相手の守備網をSO大田尾が「裏でどこかが空く」と見定め、敵陣深い位置へ高いボールを蹴り上げる。捕球したSH内田啓介が孤立したところを、スカイブルーの束が取り囲む。一気に、攻撃権を強奪した。 
 ここから左、右、左と球を振るうちに左タッチライン際に数的優位を作り、WTB中園真司のトライなどで14−0とリードを広げた。
 パナソニックの売りは、自陣に押し込まれた後の守備の分厚さだったはずだが、主力組の合流の遅れなどでその間の鎹(かすがい)を失ったか。
 HO堀江翔太主将が「(呼吸の)合い切っていないところが出た」と話すなか、SO大田尾は「パナソニックと言えど、要所を締める選手がいないと…とは感じました」。
 ヤマハは24−7と流れを掴んだ後半17、21分、王者の底力を見る。
 CTBで先発も途中からSOに入った元オーストラリア代表のベリック・バーンズにひずみを突かれながらのパス、パスダミーを交えてのキックパスを許し、日本代表のWTB山田章仁のトライを促す。24−21と追い上げられた。
 もっとも、土俵際で耐える。
 好タックル連発のFLモセ・トゥイアリイは外国人枠の都合上、後半26分に退いた。ただ代わって出たのは、身長193センチ、体重115キロの「特別枠」(他国代表キャップ不保持)扱い、FLヘル ウヴェだった。関東大学リーグで1部から2部へ降格した年の拓大主将は、30分に自陣22メートル線付近中央の密集で相手の球をもぎ取る。ボールを保持して逃げ切りたい最終盤には持ち前の突進力を披露した。
「勢いはパナソニックだった。僕のインパクトで、皆にエナジーを」
 かねてパナソニックが優勝候補の最右翼とされた今季の予定調和を、一揆のゲームプランが早速、打ち壊した。感激の白星をつかんだ清宮監督が「次は難しい試合になる」と先を見据え、黒星を喫したロビー・ディーンズ監督は「これから長くチームで練習すれば、コンビネーションは良くなる」。シーズンの度重なる変調を予感させ、それぞれ帰路についた。
(文:向 風見也)
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