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サントリー新主将、流大。オフの「涙」を超えてトップリーグ開幕へ。

2016.08.11
サントリーサンゴリアスのキャプテンとして新シーズンを迎える流大(撮影:松本かおり)
 日本最高峰トップリーグで昨季は16チーム中9位と低迷したサントリーは、今季開幕前の練習試合で好調をキープ。例年は若手主体で臨むことの多かった春先のゲームにも日本代表級の主力格を揃えるなどし、7勝1敗としている。
 失いかけた勝ち癖を取り戻すなか、主将としてチームを引っ張るのは流大である。帝京大では大学選手権6連覇を果たした時に船頭役を務めたSHが、入社2年目にしてリーダーを任された。こちらも就任初年度の沢木敬介監督が指名した。背景をこう語る。
「僕は、リーダーって、センスだと思うんです。リーダーのセンスを持って生まれた人が経験を重ねて、成長する。流にはその素質が絶対にある。自分の意志を持ってトレーニングをしているし、周りに対してしっかり言うことを言っていた」
 2010年度から3シーズンで5つの国内タイトルを獲得した名門の復権を見据え、流は「皆が変わろうとしている姿勢を見せている」。フルコンタクトでの実戦練習とマシンバイクのトレーニングを交互にこなし、心肺能力を高める。
「いいスタートは切れた。沢木さんに求められるスタンダードがぶれないですし。選手もそれを言われてやっているだけではなく、自分たちでスタンダードを高めているのがいいかな、と思います」
 昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表だった日和佐篤とポジションを争うなか、重責を担った格好だ。練習試合では先発として背番号9を付けることが多いものの、立場は安泰ではなかろう。チームを勝たせ、自分も勝つ。心のなかに、ふたつのベクトルを据える。
「正直、驚きましたし、もちろん不安はあるんですけど、(主将は)誰もができることじゃない。レギュラーになる、ならない以前に、チームをチャンピオンに導けたらすごい達成感を味わえると思います。もちろんいち選手でもあるので、9番を狙っていくこともしないといけない」
 昨季のシーズンオフ。独身寮の部屋で「寝る体勢に入っていた」時のことだ。振動したスマートフォンを覗くと、世話になっていた先輩選手の成田秀悦からのメッセージがあった。
「呼ばれた」
 会社側から今季限りの引退を告げられそう、という意味だ。成田が別な先輩と食事をしていたのは知っていたが、それは成田が退団する部員を送り出すために開いた会のはずだった。流は戸惑った。感情を揺らした。慌ててその席へ出かけた頃には、涙を浮かべていただろうか。
 いまは秋田へ転勤して地元のノーザンブレッツでプレーする成田を思い、こう言葉を絞った。
「大学の頃までのラグビー人生では、卒業のタイミングは決まっていた。それが、いまは…。わかってはいたのですが、それがこれほど衝撃的で身近だったのだと感じました」
 チームを勝たせ、自分も勝つ。そういう目標を持てることに感謝して、新しいシーズンを見据える。8月26日、大阪・ヤンマースタジアムで近鉄と今季開幕節に挑む。
(文:向 風見也)
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