ちょっとBar山田屋の大将（マスター）、山田功一さん。右にかかっているのは北野高校のジャージー。
大阪の北新地は東京の銀座と並ぶ、紳士淑女の社交の街でっせ。着物やドレス姿のホステスさん目白押し。浪速のおっさんは、10メートル歩けば1回は一目惚れするで。
そのメインストリート、堂島上通りに「ちょいとBar山田屋」はおます。まあ、北新地のど真ん中って言ってもええなあ。
大将（マスター）の山田功一はんはラグビーマンや。今や府下の公立校でお勉強トップの大阪府立北野高校のOBやね。
生年月日は？
「昭和43年。あとは非公表で」
なんでやな？（京都弁）
「誕生日におめでとう、ってメッセージくんのうっとうしい。返さんとあかんから」
ただの面倒くさがりかっ！ 読者が星座で相性占いできひんやん。
ほな次の質問。Barしてるし、ラグビー経験者やから、もちろんお酒好き？
「僕？基本的に飲まへん」
またかっ！ ほな、なんで飲み屋やねん？
「人生修養ですね。いろいろな人のいろんな顔が見られるし、話も聞かせてもらえる。人とのつながりもできるしね」
山田はんは目じり下げまくりで話すで。
下戸の大将の店は低価格がウリや。
チャージはなんと0円。この街ではありえへん。バーなら最高で3000円かける店もあるという。なんて安いんや。
その上、セルフで作るウイスキー、焼酎が350円や。まがいもんちゃうでー。ブラックニッカにさつま白波。なんでー？
「いつでも気楽にお客さんに来てもらえるようにしてますねん。せやけど、その割にはあんまりけーへんけど」
一応、お店にはルールがある。
「おひとりさま1000円は使って帰ってね」
セルフ焼酎やったら3杯。マジで、「センベロ」（1000円でベロベロになる）や。
冷蔵庫の中には日本代表をサポートするリポビタンD（300円）も入ってある。
「景品のジャパンのタオルがほしくて…」
客の疲労回復やなくて、自分のためかい！
お酒の肴（あて）は缶詰。色とりどり。一番安いのは「さんまと柚胡椒」250円、高いのは「黒毛和牛ロースト」2500円。珍味もトド、アザラシ、イノシシなんかがあるで。
「生もんやったら腐ったりするロスがあるけど、缶詰やったら少ないしね」
前にうなぎ丼作ってる写真見たけど？
「ああ、あれは『サトウのごはん』やね」
電子レンジでチーンかい！ うーん、徹底した合理主義。素晴らしい。
開店は2014年9月。来月で3年目や。実家は北新地のビル持ちで、会社組織の中では専務の山田はんは、その管理なんかをやっている。自社ビルの空きテナントを昼間は事務所、夜はBarにすることにしたんや。
カウンターとテーブルが3か所ある店内は詰めたら20人くらいはいけまっせー。好きなジャパンや東芝のジャージー、ビートルズのレコードジャケットなんかが飾られてる。
北野で楕円球を選んだ理由は？
「クラスの女の子に『高校行ったらテニスやろうと思ってんねん』と話したら、『テニスは中学からやってる子が多いから、選手になれへん。ラグビーにしたら』と言われて」
なぬ？ 人生を導いてくれた女の子がいた！ ちゅーことはひょっとして運命の出会い？ それから付き合って、結婚か？
「まったく。それまでしゃべったこともなかったし、その後の付き合いもありません。今、どないしてるんやろ」
どないやねーん！ 主体性はチャージと一緒で0かい！
北野は山田はんの1個下が花園に出る。1987年の第67回大会。3回戦で京都・伏見工に12−16で負けるが、満員札止めの大観衆やった。その辺のことは「花園が燃えた日」（論創社）が詳しいから、購入してご参照を。
選手やったハシゲさんは大阪の首長になり、トミーさんは議員バッヂをつけ、オサムさんは大手生保の最年少支社長に抜擢された。
「僕がHOいったり、NO8にいったりしていたから、後輩らが経験積めて、全国大会行けたんとちゃうかな」
あんたが、42年ぶり出場の立役者かっ！
今でも月に1回、若手OB（といっても山田はんはアラフィフやが）がお店に集まって、プチOB会が開かれている。
これからこのお店、どないしたい？
「この値段やったら、なんぼ売っても、もうからん。まあでも、毎日楽しいからええかなあ。しんどすぎんのも、かなんしね。お客さんは、ほどほどに来てくれたらええですわ」
最後まで商売っ気まったくなし。せやけど人柄のよさは天下一品。山田はんのエビス顔を見に行くのも悪くないで。大阪は戎さんの街や。福が来るかもしれんよ。
◆ちょいとBar山田屋◆
住所 〒530−0003 大阪市北区堂島1−3−34 第二京松ビル2階
電話番号 080−6215−5616
営業時間 18時30分〜24時（ラストオーダーは23時30分）
定休日 土、日、祝日（お盆休みは8月11日〜16日）
（文：鎮 勝也）
ずらり並ぶ肴（あて）の缶詰
手前左がイノシシ、右がトド、後ろが北海道和牛の缶詰