ワールドラグビーU20チャンピオンシップのイタリア戦でプレーするアタアタ・モエアキオラ
(撮影:出村謙知)
昨季は関東大学リーグ戦1部の王者となり、2度目となる大学選手権準優勝を果たした東海大。肉体強化と勤勉さを貴しとする同部にあって、核弾頭となりうるのがアタアタ・モエアキオラだ。1年目に挑んだコンバート、春先に経験した国際経験を経て、バージョンアップを図っている。
身長185センチ、体重107キロという体躯でSOやCTBを務めてきた、トンガ出身の2年生。ルーキーイヤーだった昨季は、同級生のテビタ・タタフが左ひざ前十字靭帯を断裂して抜けたNO8の穴を埋めることとなった。図らずも、木村季由監督いわく「ラン、パスと、何でもできるNO8」が登場した格好だ。タタフが戻った今季はBKでのプレーに専念するつもりだ。もっとも、本職と比べて肉弾戦に数多く加わるNO8での経験は無駄にしない。
目指すは、泥仕事も厭わぬ本板前か。
「NO8をやったおかげで、自分の接点でのプレーのレベルは上がったかな、と思います」
昨今の活躍と将来性が見込まれ、今春、中竹竜二ヘッドコーチ(HC)代行が率いる若手中心の日本代表に呼ばれた。アジアラグビーチャンピオンシップではおもにWTBとしてプレーし、スペースを駆け抜ける緩急ある走りを披露。その背景には里大輔ランニングコーチの指導が活きていたという。
練習では、効果的な加速を産み出すランニングフォームを指導された。結果、ゲームではややべた足のようなステップでどんどんエンジンをふかせるようになり、相手とぶつからずして人垣を破れるようになった。
「里さんから教わったランニングのスキルで、スピードは上がったかな」
6月には20歳以下(U20)日本代表として、イングランドでのワールドラグビーU20チャンピオンシップに出場。最下位に沈んで下部トーナメント降格の憂き目にあったが、個人としては最大級の成果を得る。
同月7日のU20南アフリカ代表戦(●19−59)では、敵陣10メートル線付近右のラインアウトからの攻撃で司令塔の脇へ飛び出す。里コーチの教えを活かし、低い重心で細やかなステップを踏むほど加速力を高める。一気に、インゴールへ直進した。
日本代表ツアー中に同種のサインでトライを奪えなかったシーンがあったとし、「今度は抜けたら絶対に取り切ろうと思っていた」と笑うのだ。そして大会では、U20南アフリカ代表戦での3トライを含め、通算6トライをマークできた。
「試合の結果は残念でしたけど、個人的にはトライも取れたし、とてもいい経験ができました。試合前に高めたモチベーションは、『絶対にトライ取る』ということでした」
中学校3年生にあたる学年だった頃に来日し、東京・目黒学院中に在籍。同高では同級生のタタフとともに全国高校ラグビー大会などで活躍し、一緒に東海大へ進学した。この国の義務教育を受けていたことから、上限が2となっている外国人枠の外でのプレーが可能だ。
「海外でのスピードと強さに慣れたかな、と。日本に帰って来ても、東海大のコーチにも『WTB(でのプレー)もいいね』と言われました」
日々上達する日本語で、内なる手応えを語る。列島で目指すクラブの優勝に向け、第4のポジションにあたるWTBも任されそうだ。
(文:向 風見也)